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                 No.1




5日間・3ヶ国

喧騒・雑踏・グルメの香港
カジノのマカオ、経済特区・深せん


1996年12月8日〜12日





1.香 港・・・・ 百万ドルの夜景・中国料理・足ツボマッサ−ジ
 
今度の旅はツア−に参加の団体旅行である。やはり短期の旅行となれば、金額的に団体旅行にはかなわない。ツア−での香港旅行は三泊四日が標準旅程であるが、それにフリ−の一日を加えて四泊五日のコ−スを申し込む。追加したフリ−の一日を除いて、観光付き・全食事付きである。ツア−だから“篭の鳥”にならざるを得ないのだろうが、さて、どんな旅が始まるのだろう。
 

九十六年十二月八日、出発の日は奇しくも大東亜戦争開戦記念日である。集合時間が早いので博多のホテルに前夜から一泊、用意したパンと牛乳で朝食を済ませてから福岡空港へ向かう。遠くに見える山沿いは、白い雪でうっすらと薄化粧をしている。少し冷え込んでいるが、天候はまずまずの天気である。八時四十五分の集合だが、それより早く空港に到着し、ツア−受付窓口で到着確認の手続きを済ませる。九時半に再集合するまで自由にしていてくれとのことなので、ベンチに腰掛けながらテレビを見て過ごす。そのうち、ふと出国前に香港ドルへの両替を思いつき、空港内の福岡銀行を探して行ってみる。だが残念ながら、ここでは米ドルの両替しか扱っていない。
 

九時半になって集合場所へ行くと、参加者五十名全員が集合している。一行は現地で二台のバスに分乗し、それぞれ女性の添乗員が一人ずつ付くことになっている。参加者には老夫婦や母娘連れ、OLの二人連れ、女子大生の三人グル−プ、小企業の中年社員四人グル−プなどがいて、なかなか多彩である。単身の参加は我輩のみである。集まった全員を前に、旅行全般についての注意があり、特にスリが多いので注意するようにとのことである。最後に、それぞれ搭乗券をもらって間もなく出国である。
 

香港啓徳空港到着
定刻十時四十五分に飛び立ったJAL機は、大勢の日本人団体客ばかりを乗せておよそ三時間で香港啓徳空港へ到着。出発前、もらった搭乗券が喫煙席になっているので、禁煙席への変更はできないかと尋ねてみる。が満席らしく、またグル−プ全員が喫煙席でもあるので辛抱願いたいという。やはり私の心配は的中し、飛行中ずっと前後左右の男性乗客が入れ替わり立ち替わり喫煙し続け、タバコの煙にいぶされる羽目になってしまう。


この香港啓徳空港への着陸には、世界で最も高度なテクニックが要求されるらしい。林立する高層ビルの谷間を縫うようにしながら屋上すれすれに超低空飛行して着陸しなければならないのだ。まかり間違えば、ビル衝突の大惨事になりかねない。その着陸の様子を窓外に眺めながら緊張しているうちに、機は無事着陸し安堵する。現地時間は午後一時半である。香港の空は分厚い雲で覆われ、雨こそ降ってはいないもののグレ−な気分にさせられる。入国審査の行列に並んで小一時間、やっと通過すると今度は荷物の受け取りに時間がかかる。玄関に出ると、バス待ちにたっぷりと時間がかかる。手回しが悪いと、みんなでぐちり合う。団体旅行はこれだからかなわない。
 

市内観光・タイガ−バ−ム・ガ−デン
ずいぶんと時間をかけて、やっとバスに分乗。これから香港島の観光へと向かう。空港のある九龍地区から海底トンネルを抜けて香港島へ渡り、最初の観光スポットであるタイガ−バ−ム・ガ−デンへ到着。ここは高層アパ−トに囲まれた斜面の一角に個人の趣味で造られた宗教的なガ−デンで、それが一般に無料で公開されているものである。


その個人とは胡文虎のことで、かれは裸一貫から始めて万能薬「万金油」(一般にいうマンキンタン)を発明し、アジア各地にこの薬を売って一代で大金持ちになったというサクセス・スト−リ−の持ち主である。このガ−デンは、彼が香港庶民への利益還元、道徳普及を目的に一九三五年に造ったものだという。広い壁面には仏教や道教の立体絵巻がコンクリ−トで造形されており、それが極彩色に塗られている。その左手には朱塗りの柱を持つ宮殿風の建物が立っている。ここには胡文虎の娘が住んでいるという。
 

また、斜面一帯には様々な造形物がコンクリ−トで造られており、その一角にはパゴダも建っている。そして通り道では万金油軟膏を売っている。ガイドのパンさんによれば、ここのは本物の万金油ではないという。シンガポ−ルで作られた万金油が本物だという。現在、胡一族はその本拠地をシンガポ−ルに移し、アジア各地を舞台にますます財を成しているという。そして、シンガポ−ルにもタイガ−バ−ム・ガ−デンがあり、こちらはシンガポ−ル政府に寄贈されたそうだ。 






タイガーバーム・ガーデン














 同 上















 同上のパゴダ










この万金油を買った人のをかがせてもらうと、それはメンソレ−タムの類で、それほど強くはないがス−ッとする匂いが漂う塗り軟膏薬である。効能は万病に効くとかで、これをこめかみや肩などに塗ると頭痛・肩凝りがなおるという。後でパンさんが見せてくれたシンガポ−ル製の万金油とかぎ比べをしてみると、やはり彼のいうとおりシンガポ−ル製のほうがス−ッとした匂いがやや強く効き目もありそうだ。
 

レパルスベイ
ガ−デンを後にすると、次は香港島の裏側にあたるレパルスベイへ向かう。山を越えて島の南側に出て道路を下り始めると、前方にハワイのワイキキを小型にしたような白い砂浜と海岸線が開けてくる。ここがレパルスベイだ。ここには西洋の香りのする洋館や超高級リゾ−トマンションが点在し、映画「慕情」の舞台としても有名な海岸である。


パンさんの話によると、香港では風水占いによる思考が強く、土地柄については山と水が備わると良いという。特に山を背にして全面に海が開ける土地は風水に叶って最高の土地柄らしく、その土地の値段は高くなるという。このリゾ−ト地がまさにその条件を備えている場所で、青い海を見下ろす場所に建っているマンションの値段はべらぼうに高い。例えば、道路沿いに見える瀟洒なマンションの家賃は月三百万円もするというし、また、それより少し離れた高台に建つ高層マンションに住むアグネス・チャンの部屋(写真の左手に見えるブル−のラインが入った建物)は、月百五十万円の家賃だという。
 

ビ−チの近くでバスを降りると、みんな砂浜へ繰り出す。ビ−チに面してマクドナルドやケンタッキ−フライドチキンなどの店が並び、そこの無料トイレを借りて用を足すことになっている。ビ−チの隅には天后廟の中国風建物があり、その前面には人目を引く大きな男女の立像が立っている。そこは無視して、その前から長く突き出ている突堤のほうへ一人テクテク歩き進んで行く。先端は展望所になっていて海岸線やビ−チが一望に見渡せるようになっている。ビ−チでは水中で水遊びする人の姿も見えるが、シ−ズンオフのためか海水浴客の姿は見られない。






 天后廟









 

オーストラリア人と立ち話
このビ−チを背景に写真を撮ってもらおうと近くに人を探すのだが、適当な人が見当たらない。ツア−の仲間はだれ一人ここまで来る者はいない。みんなマクドナルドあたりで休息しているらしい。そこで、だれかが通り掛かるのを待っていると、ラフな姿の西洋人男性がやってくる。これはしめたと写真撮りを頼むと、「あゝ、いいですとも」と快く引き受けてくれる。






レパルスベイのビーチ










撮り終えてから、少し話をしてみる。「ここに住んでおられるんですか?」「えゝ、向こうに見えるアパ−トに住んでいるんです。」と、高級マンションのほうを指さす。「仕事で来られてるんですか?」「えゝ、お酒の仕事をしているんです。主にワインを輸入して販売しているんです。」「商売繁盛ですか?」「香港ではいい商売ができますよ。ここは住み心地もいいし、素晴らしい所です。」「どちらから来られたんですか?」「オ−ストラリアです。」「オ−ストラリアですか! なかなか素敵な国ですね。昨年、お国を旅行しましたよ。オ−ストラリアは、どちらからですか?」「〇〇△△です。」「そこはどの位置にあるんですか?」「シドニ−の少し南にあたります。」 


そんな会話を交わしながら、自分が日本の長崎から来たこと、引退教師でビジネス関係の科目を教えていたことなど、相手の質問にも答えたりしながら、しばし立ち話に時を過ごす。そして最後に、彼の名刺を出して渡してくれる。それを見ると、彼の名は“ダビッド コ−ウィ氏”で、国際ブドウ酒醸造販売会社アジア地域営業所の経理部長となっている。三十代後半に見える若い紳士だが、結構要職に就いているのだ。この旅初めての英会話の機会が得られたわけである。
 

スタンレ−マ−ケットへ
彼に別れを告げるとマクドナルド店へ戻り、トイレを済ませてからジュ−ス小カップ一杯を買って喉を潤す。海岸通りには土産品店や果物・野菜などを売っている小店が並んでいるぐらいで、あまりめぼしい店はなさそうだ。出発したバスは、次の観光スポット・スタンレ−マ−ケットへと向かう。ここは同じ海岸沿いの町で、このビ−チから車で十五分ぐらいの距離にある。 “マ−ケット”とあるように、ここは細い路地沿いに小さな商店や露店がぎっしりと並んで壮観な光景を呈している。ここには衣類、食料品、みやげ品をはじめ、種々雑多な店が軒を連ねてひしめき合っている。ここは香港で唯一、英語の通じる市場だそうで、欧米人観光客が多いという。試しに英語で話しかけてみると、確かに店員は英語で応対してくれる。
 






スタンレーマーケットの人込み










印鑑の注文
ガイドのパンさんの話では、ここでは短時間で安くハンコが作れますよというので、バスを降りると目の前のハンコ屋で早速尋ねてみる。十分間で彫れるというので、一〇〇香港ドル(一、五〇〇円)の一番安い小型の印石を選び、「向井」とメモして書体を決め注文する。ハンコの素材は石なのだが、その頭部に虎や豚などの様々な動物が彫り込んである。虎が縁起がいいというので、それを選ぶことにする。
 

ハンコの仕上がりを待っている間に、細い路地に並ぶマ−ケットを一巡してみる。その途中に、ここでは珍しい二階建てのみやげ品店があるので中へ入りいろいろ物色してみる。その中で、ガラスケ−スに入った精巧なコルク細工が目に止まり、一番小さくて安価なものを二つ選んで購入する。支払いの折、電卓片手に値ぎりの商談を始め、切りのいい数字まで値下げしてもらう。


店を出てから辺りをひと巡りすると、集合時間も近づいたのでハンコ屋に戻り、出来上がった印鑑を受け取る。手にして見ると、文字部分が彫り込んであるだけで、文字部分を彫り残す普通のハンコとは違うのだ。だから押印すると朱肉の付く面積が多く、結局朱肉で文字を白抜きにしたものである。道理で早いはずだ。店のオバさんがいうには、この書体はテンコク文字だとかで、それは結構気に入ったのだが、意図したものとはやや思惑はずれということになる。
 

アバディ−ンの水上レストラン
スタンレ−・マ−ケットを後にしたバスは、次のポイントである有名なアバディ−ンの水上レストランへ向かう。もうすっかり夜のとばりが下りていて、暗闇の中に夜景が浮かび上がっている。バスは夜道を再びレパルスベイのほうへ引き返し、そこを通り過ぎてさらに海岸沿いを走り続ける。このアバディ−ンもやはり香港島の南側沿岸に位置しているのである。この地は湾内に浮かぶ水上生活者たちの船の群れと水上レストランで名の知られた場所で、香港ツア−ではこの水上レストランでの夕食付きが定番となっている。
 

バスから降り立つと、派手なイルミネ−ションに燦然と輝く水上レストランの館が夜の湾内にぽっかりと浮かんでおり、その背後遠くには高層マンションの夜景がそびえている。そこまでは、小型の連絡船に乗って渡ることになっていて、所要時間はほんの三、四分。






イルミネーションに輝く水上レストラン









館はコンクリ−トを張ったポンツ−ンの上に建てられており、二軒の中華レストランが並んでいる。玄関を入ると、まず朱塗り一色のド派手な内装と赤じゅうたん、そして正面に飾られた金色に輝く二匹の竜に驚かされる。赤毛せんの敷かれた階段を上って室内に入ると、広大な場内はこれがまた壮観な朱塗り一色の装飾で、それを何列にもずらりと並んだ電光飾が真昼のように照らし出し、その様はまさに圧巻である。
 





水上レストラン入口















水上レストランの内部










体中が朱に染まりそうになりながら席に着くと、九人掛けの丸テ−ブルで広東料理の食事が始まる。私の両側には柳川から来たという母娘連れと博多から来たという母娘連れが座り、談笑しながら料理をつつく。出発前に、この地のウェ−タ−やウェ−トレスの給仕マナ−について添乗さんが説明してくれたのだが、日本人から見たらそのぞんざいさに驚くだろうが、それがこの地のマナ−だから奇異な目で見ないようにとのことであった。確かに、ス−プなどを注ぎ分けてくれるのだが、その注ぎ方たるや子供の食事のようにポタポタと滴を平気で垂れ流すのである。だからテ−ブルの上は滴でベタベタとなる。また、片付けの際にも皿やお椀などが割れるのではないかと心配するほどガチャガチャと荒っぽく扱うのである。
 

ス−プから始まった料理のコ−スは、まだ出てくるのかと思うほど多くの種類が続々と運ばれ、最後に大きな川魚の料理が運ばれると、その後オレンジやパインなどのフル−ツが出ておしまいとなる。広東料理は薄味で、どちらかといえば少し味気ないが、さすがにエビ料理などは美味しくいただける。焼き飯は米がパサパサでもうひとつの味である。自己負担でビ−ルを取って飲む人もいたが、私はお腹が脹れて料理が楽しめないので、出される中国茶で十分だと考え遠慮することにする。
 

ヴィクトリア・ピ−ク
十分に満腹した後、再び連絡船に乗って陸地へ戻り、バスに乗ってヴィクトリア・ピ−クへと向かう。ここは香港の観光ポイントの中でも最も有名な場所で、“一〇〇万ドルの夜景”が楽しめるのだ。途中、パンさんがしきりにスリの注意を促す。暗がりの込み合った道を上るので、スリがまぎれ込んでよく被害に遭うからという。自分達には見分けがつくのだが、「スリに注意して〜」とその場で声を掛ければ、彼らはグル−プを組んでいるので自分が殴られる恐れがある。だから、くれぐれも各自で注意するようにと、しつこいほどの警告を受ける。
 

バスを降りてやや細い坂道を五、六分ほど上っていくと、左手に展望所があって大勢の観光客が詰め掛けている。そこから見下ろすと、眼下に見事な“一〇〇万ドルの夜景”が広がっている。すぐ足元にはセントラル地区の高層ビル群が、そして海を挟んで対岸には九龍半島の夜景が浮かんでいる。この美しい香港の夜景を三枚続きの連続写真に収める。 



 香港の夜景(ビクトリア・ピークより)




ホテルへ
スリ騒動もなく無事バスに戻ると、やっと休息場所のホテルへ向けて走り出す。初日の日程はなんと忙しい、そして長いことよ。ホテルは九龍半島側にあるのだが、その中心街から車で半時間もかかる沙田(シャティン)という郊外にある。高層の大きなホテルに着いたのは夜の九時過ぎ、一人寝にはもったいないほどの大きな部屋に入って旅装を解く。部屋には不必要にク−ラ−が入っており、冷や冷やと肌寒い。添乗さんの話のとおり、ここは年中ク−ラ−が入っているらしい。スイッチを切っても冷たい風が吹き出てくるのには参ってしまう。
 

すぐ近くにセブンイレブンのコンビニがあるというので、早速ミネラル水を仕入れに外出する。ホテルから数十メ−トルのところに、ちょっとした商店街がある。ここにコンビニがあるのは何かと便利だ。入ってみると店は小さくて狭く、それほど品揃えもない。とりあえず、ミネラル水二本とオレンジジュ−ス一本を買ってホテルへ戻る。バスタブにたっぷりお湯を注ぎ込み、ゆっくりと体を浸しながら香港最初の夜をくつろぐ。



(次ページは「九龍観光編」です。)






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