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                 No.2




二日目。曇り空の中に広がる窓外の景色を眺めると、目の前には道路を隔てて静かな川が流れている。その向こうには高層マンションのビルが林立している。この付近一帯は、郊外における格好な居住地域として開発されたらしい。






立ち並ぶ高層マンション群
沙田にあるホテルの窓からの眺望







洗面を済ませて食堂に行くと、そこにはとりどりの中・洋折衷の料理が用意されていて、なかなか豊かな内容である。お粥にパン、スクランブルエッグ、ハム、ソ−セ−ジ、フル−ツなどを盛り込んで、牛乳とコ−ヒ−でお腹を満たす。
 

九龍観光
今日は終日、九龍観光ということで、九時ごろホテルを出発。市街地に入ると、まず啓徳空港一帯の眺望がきく展望所に向かい、そこでスナップ撮りのために小休止する。ここから眺めると、香港の街はほんとにビルの多さが目立つ。群立するビルに取り囲まれるように、啓徳空港の滑走路が長く横たわっている。なるほど、これではビルをかすめながら離着陸する高等技術が要るはずだ。眺めている間にも、ゼット機が頻繁に離着陸している。
 

 啓徳空港の遠望


黄大仙廟
それから次は、黄大仙廟という道教の寺院へ向かう。ここは香港の数ある道教寺院のなかで最も有名で、願い事がかなう、霊験あらたか、などの寺として多くの信者が毎日ひっきりなしにお参りに来るという。人々はこの寺で願をかけ、また占いをして神様の指示を仰ぐ。そして、願い事がかなうと、お礼にお供え物をあげにやってくる。境内へ入ると、祭壇正面の地べたには多数の信者たちがお供物の果物、酒、ニワトリの丸焼きなどを自分の前に置き、地面にひざまずいて額を擦りつけながら占いをしたり、願をかけている。日本では少しお上品にやるわけだが、願かける信者の姿は何処も同じだ。
 





道教の寺院・黄大仙廟















ニワトリ・酒・果物などをお供えして願をかける










高層アパート
境内から横手に抜けて下りて行くと、建物が並んでいる。中に入ると、路地を挟んで両側に狭い間口の占いの店がずらりと並んでいる。この一帯には、一六〇軒の占い店がひしめいているという。






ずらりと並んだ占い店










寺院の前方には難民を収容していたという二十階建てぐらいの高層アパ−トが立っている。現在では低層階級の庶民アパ−トになっているそうだが、ここには窓がついていないという。






難民アパート・ほとんどの家には窓がない









よくみると、たまにサッシの窓を取り付けているところもあるが、ほとんどの窓は何もないスッポンポンの状態になっている。冬でもそれほど気温は下がらないとはいえ、雨露をしのぐのに困らないのだろうか。もっとも、パンさんの話では、一般家庭が住む高層アパ−トでも、台風時には風圧を避けるために表と裏の窓を開けたままにして風を通すそうだ。それにしても、「所変われば品変わる」で、面白い対応策があるものだ。
 

お付き合いのショッピング
寺院を後にすると、その後はお決まりのショッピングである。そのショッピングめぐりは、まずシルク製品の店、皮革製品の店と回り、そこで昼食をはさんで午後は宝石店、漢方薬の店、そして最後のとどめが免税店とすさまじいかぎりである。観光とは名ばかりで、終日ショッピングに付き合わされるのには閉口するが、個人旅行では不可能な団体格安料金に便乗するからには、これも料金のうちと思って辛抱するしかない。


なにせ団体旅行が格安料金にできるのも、こうした指定の店舗にお客を運ぶことによって、バス一台幾らというリベ−トを店のほうから貰うからだというのである。だから、旅行社のほうもお客が機嫌よくショッピングに付き合ってくれることを望んでいるし、またお店のほうもリベ−ト分を稼ぐために、来客一人ひとりに店員がしつこくつきまとって何がなんでも商品を売り込もうとする。
 

だから、ショッピングには無縁の私などに当たった店員さんは誠に気の毒だが、こちらも懸命に勧める商品を断わるのに苦労することになる。そこで、「私は予算がないので買いたいのだが買えないの。だから他のお客さんを狙ったほうがいいですよ。失望させるから……。」と最初からいうことにしている。それでもまだ諦めずに辛抱強く、あれはどうだ、これはどうだと迫ってくる。案内されるどの店も、みんな日本語が達者なので言葉には不自由しない。こちらはせいぜいトイレとお茶のサ−ビスを利用させてもらうより他に手はない。
 

昼食は広東式飲茶
昼食は中華レストランで広東式飲茶のご馳走である。ほかほかに蒸し上がったとりどりのシュウマイが、湯気立つ蒸しセイロに入れられて次々に運ばれてくる。そのどれも美味しいが、特にエビシュウマイが旨い。これらのシュウマイにス−プや麺などもついて、お腹いっぱい。でも、先年シンガポ−ルで食べた飲茶にはかなわない。
 

またまたお付き合いショッピング
満腹した後は、再び予定のショッピングに付き合わされる。なかでも、漢方薬の店では参ってしまう。店の奥に五〇人以上が座れるような部屋が用意されており、バスでやってきた団体客をそっくり導入して座らせる。それから漢方薬の案内パンフレットが渡され、それに掲載されている十一種類の薬について女性の先生が三十分以上にわたり、つべこべと説明するのである。それをじっと耐えて耳を傾ける。居眠りする者もいるが、こちらは少し興味もあって付き合うことにする。どれも何がしかの効能はあるのだろうが、いずれも万円単位もする高価品ばかりで、だれも手を出そうとはしない。これでは商売にならないだろう。
 

珍しい建築現場
移動する途中、珍しい光景に出会う。それは建築現場の足場である。ここ香港では数十階の高層ビル建築の現場でも、その足場に何百本もの長い竹棒を見事に組み合わせて使っている。どこの建築現場を見ても、鉄棒を使っている所は見当たらない。この竹が軽くて丈夫なのだそうだ。やはり中国人の考え出すことである。
 







  珍しい竹製の足場

















ネイザン・ロ−ド
最後はお決まりの免税店である。ここで四〇分も時間をとるというので、こちらは街の探索に出掛ける。ここから歩いて十五分ぐらいのところにネイザン・ロ−ドがあるというので行ってみよう。ここは九龍半島の最南端に位置する尖沙咀(チム・シャ・ツォイ)地区を貫く有名な幅広いメインストリ−トである。ここは香港島セントラル地区(香港経済の中心)と並ぶ香港の商業中心街で、あらゆる種類の商店が新旧・高低ごっちゃになって立ち並び、それらがド派手な看板を路上狭しと突き出している。
 

二十世紀の初め、十三代総督ネイザン卿は、荒れ地の真ん中に一本の大きな道路を敷いた。九龍を南北に貫くこのネイザン・ロ−ドは、当時、広すぎて気違い沙汰とさえ言われていたそうだが、以来、この地区はめざましい発展を遂げ、今日では香港中心部のメインストリ−トになっている。この道路は、九龍南端から尖沙咀、佐敦、旺角と北へ延び、界限街まで三・八kmの長さだが、店も物も人も磁石に吸い寄せられるように、このストリ−トに集まっている。
 

急ぎ足で歩きながら、途中、確認のため通行人に広東語で「ネイザン・ロ−ド ハイピント?(ネイザン・ロ−ドはどこですか)」と尋ねてみる。すると彼は、親切に英語で方向を教えてくれる。初めての広東語が通じて楽しい気分になる。「ンコイ(ありがとう)」と礼をいってしばらく進んで行くと、婦人警官が歩いている。そこで再び広東語を使いたくなって同じ質問を投げかけてみる。彼女もまた親切に道を教えてくれる。再び「ンコイ」と礼をいうと、首を傾げて「少し違うね。」とニヤニヤしながら日本語で応答してくる。日本語とは驚いたものだ。どうも発音の抑揚が違うらしいのだ。後でガイドのパンさんに習っておこう。
 

中国語系のイントネ−ションは四声もあって、単語ごとの抑揚を覚えるのは大変である。そして、一般に中国語といわれる北京語と中国・広州や香港で使われている広東語とは全く違うのである。だから北京語を知っていても、ここではまるっきり通用しないことになる。
 

めざすネイザン・ロ−ドに到着してみると、何台ものダブルデッカ−バスや普通バスが数珠つなぎになって道路狭しとばかりに往来している。通りもその蔭になって見通しがきかない。そして、さまざまな商店がびっしりと軒を連ねる歩道は、人込みでいっぱいだ。喧騒、雑踏、看板とネオンの洪水……ここにこそ香港の顔が見られる。写真を撮って歩道をウロウロしていると、先ほどの婦人警官と再会し、「おやまあ」という様子でニコッと笑うと、「ここがネイザン・ロ−ドですよ。」と教えてくれる。
 





ネイザン・ロードに向かうところ















昼間のネイザン・ロード















夜のネイザン・ロード










品物によっては、さすがに値段が安い。例えば旅行カバンで、機内に持ち込めるキャリ−バッグが一、五〇〇円から二、〇〇〇円で売られている。日本では最低でも五、〇〇〇円はするところである。あまり時間がないので、ここらで引き返すことにする。免税店に戻ってみると、グル−プのみなさんは手に手にショッピングバッグをぶら下げている。結構買い込んでいる様子だ。
 

ディナ−・クル−ズ
一日がかりのショッピングからやっと開放されて、これからディナ−・クル−ズに向かう。ヴィクトリア湾に浮かぶ瀟洒なクル−ズで夕食を取りながら、海上から香港の夜景を楽しむ算段である。六時前、波止場に着くと、しばらくの間乗船待ちである。
 

ところで、旅行日程を一日追加した四日目は自由行動日だが、この日を日帰り中国旅行にあてている。ところが、そのツア−の現地旅行社に連絡しようにも初日のホテル到着が夜遅く、電話しても閉店していて連絡が取れない。それに今日もディナ−・クル−ズで帰りは遅くなる。明日の夜も当てにならい。ビザも依頼しないといけないので、早く申し込む必要がある。そこで今朝、パンさんに頼んでショッピングに行った店の電話を拝借し連絡することにする。そしてうまく連絡が取れ、パスポ−ト・ナンバ−など必要事項を告げて無事申し込み手続きを終わる。       


クル−ザ−に乗船すると船室に配置されたテ−ブルに着き、早速ディナ−が始まる。料理は中・洋折衷のバイキング方式である。乗客は日本人ばかりの貸し切り状態である。この香港にとって日本人は良いお得意さんだ。お腹いっぱいになるまで何度か立って料理を運び込む。さすがに料理の種類は豊富で、ロ−ストビ−フなどの肉類やハム・ソ−セ−ジ、海鮮、各種のサラダやフル−ツ、美味しそうなケ−キ類もそろっている。今夜も飲物は特別に注文せず、無料のお茶で喉を潤す。
 

デザ−トにモモやミカン、パインなど数種類のフル−ツをいただいて一服すると、すっかり暗くなった階上のデッキに一人上って夜景に見とれる。みんな階下のキャビンでゆっくりディナ−を楽しんでいるのか、まだデッキにはだれも人影は見えない。ぐるっと見渡すと、イルミネ−ションに輝く高層ビル群が映える香港島の夜景と、これまたクリスマスデコレ−ション用のイルミネ−ションが輝く九龍半島側の夜景が浮かび上がっている。
 

美しいイルミネーション
やがて、みんなもデッキへ上がって来ると、一様にイルミネ−ションに映える香港の夜景に感嘆の声をあげている。船は香港島側の海岸沿いにゆっくりと進みながらその夜景を鑑賞すると、今度は九龍側の沿岸に出て漂流しながらそこの夜景を楽しませてくれる。特にここのクリスマスデコレ−ションが美しく、ビルの壁面いっぱいにサンタやトナカイの群れが走る様をイルミネ−ションで描いた電光飾は見事である。ここぞとばかり、みんなもこれを背景にした記念撮影に余念がない。みんながひとしきり写真を撮り終えたころ、船は静かに動き出し終着点の桟橋へと向かう。
 





香港の夜景(クルーズ船上より)













 クリスマスデコレーションのイルミネーション(船上より)





女人街
ディナ−クル−ズを堪能した後は、波止場で待っているバスに乗って夜の女人街へ繰り出す。ネイザンロ−ドに沿って地下鉄が走っているが、ここは前述した尖沙咀から三駅先の旺角(ウォン コツ)に位置している。この地区で最も有名なショッピング・エリアが「女人街」である。そこには女性ものの衣類や雑貨を中心にした露店が数百メ−トルにわたってぎっしりと並んでおり、通るのもままならないほど人込みでごった返している。そしてさらに、この露店の裏側に隠れるように商店がびっしりと立ち並んでいる。昼前からポツリポツリと店が開き始め、夕方から賑わい始めるという。また一駅離れた油麻地には、女人街とは対称的に男性もの中心の男人街がある。
 





人出で賑わう夜の女人街










人込みをかき分けながら通りの端のほうまで急ぎ足で探索してみる。店頭には女性もののブラウスやTシャツ、それにパンティなどの下着類が無数にぶら下げられている。バッグ類その他の雑貨もあふれている。その中にただ一軒だけ、珍しく傘を売っている店が目に留まる。そうだ、愛妻へのおみやげはこれにしよう。そこで、好みの柄の折り畳み傘を選び、「ペンディ! ペンディ!(まけて!)」とパンさんから教えてもらった値切りの用語を繰り返して叫ぶ。その結果、六〇香港ドル(九〇〇円)で交渉成立。まあまあの値段だろうか。
 

遅いホテル到着
帰りの時間が迫ってきたので急いでバスのほうへ戻る。みんな待っているのに、出発時間になっても夫婦連れ一組がなかなか戻って来ない。ガイドのパンさんが気にして探しに出動する。彼とは行き違いになって半時間遅れでこの夫婦が戻って来る。「時間はわかっていたのだが、つい買物で遅くなった。」という身勝手な言い訳にみんな気分を悪くする。このグル−プには、たびたび集合時間の遅れを引き起こす非常識な人たちがいて不愉快である。これだから団体旅行は困りものだ。ガイドさんも、お客に対してはあまり厳しく言えないらしい。この遅れもあって、結局ホテルに着いたのは昨夜に引き続き九時四十五分である。



(次ページは「マカオ観光編」です。)






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