隣接の教会
外に出ると、右手に回って隣接の教会に入る。二重の扉を開いて中に入ると、天井の高いこぢんまりとした空間が広がっている。だが、歴史を感じさせる匂いがする。2人の参詣者を除いて、ここにも人気はなく、ほのかな灯に照らされた祭壇が心にしみる静寂の時間と安らぎを与えている。
塔に隣接するトリニティ教会
それを知ってか、後方の壁ぎわにある階段に1人の若い婦人が腰掛けて、静かに瞑想している。ちょっと悪いが、お邪魔して話しかけてみる。
「お祈りをしてるんですか?」
「えぇ、時々ここに来て、こうして座っているんです。ここで過ごしていると、と
ても心が安らいで気持ちが落ち着くんですよ。」
とにっこり微笑みながら答えてくれる。
「この街にお住まいなんですか?」
「えぇ、この近くなんです。だから、ちょいちょい来られます。」
「では、幸せな時をお過ごしください。」
「ありがとうございます。」
こんな会話を交わして静かに退出する。ここだと、静寂の空間を独占できて、さぞかし思いの丈の祈りを捧げることができるに違いない。
ラウンドタワーのこと
もらった資料によると、このラウンドタワ−は1637年7月に定礎式があげられ、その建設には国王クリスチャン4世自ら率先し、ハンス・ステ−ンウィンクルが建築技師を務めたとある。この塔と教会は一体となっており、しかも塔の上には天文台が設けられるという珍しいトリニタティス・コンプレックス(複合建築物)となっている。この特徴的な建物は17世紀の学者に重要な3つの設備を集めることが図られている。その3つとは、天文台、学生のための教会、それに大学図書館である。
塔の高さは35m弱で、ヨ−ロッパでは珍しい螺旋状の坂道廊下は209mの長さがあり、塔を7回転半しながら屋上まで続いている。展望台を囲む鉄格子は、王室付き彫金師キャスパ−・フィンケが1647年に制作したものだそうで、何気なく見たあのフェンスもなかなかの由緒ものなのだ。屋上にある天文台のド−ムはヨ−ロッパでは最古のもので1861年までコペンハ−ゲン大学が使っていたという。現在では誰でも利用ができ、塔の望遠鏡で夜空の観察もできるそうだ。また、教会の天井上にある会館は大学図書館となっており、塔正面の壁面上部には、1642年の年号が入った金箔の碑文が刻まれている。
もらった日本語の資料を後で読んでみると、これがなかなか由緒のある教会と塔であることがわかり、外に出て改めて眺め直すことになる。外壁の上部を見上げると、鮮やかな王冠と金箔の大きな碑文が見える。レンガを巧みに積み上げて造られた円筒形の塔をもう一度仰ぎ見ながらここを後にする。
昼食は中華料理
ここからもと来た道をたどって中央駅へ向かう。雨の中、これから先へ進むのは遠すぎるし、そんなに時間もない。ここはそろそろ昼食の時間にしたが無難のようだ。となれば、来る時に目星をつけていた中華レストランへ行ってみよう。久々に麺類が食べたくなったのだ。そう思いながら歩行者天国へ戻り、その通りの2階にあるレストランへ入る。お客はまばらである。
出迎えた中国系のウェイトレスに、「カ−ド払いはできますか?」と尋ねると、「はい、できます。ただし、カ−ドだと手数料が少しかかりますが……。」との返事。クロ−ネの現金は持ち合わせがないので、それで了承する。テ−ブルに着いてメニュ−を見せてもらい、「ヌ−ドルス−プはありますか?」と尋ねると、何種類かの麺料理を示してくれる。そこで、「この中でどれがお勧め?」と尋ねると、「それぞれの好みがありますから……。」といって遠慮している。
仕方なく、それぞれの内容の説明を受けて、エビなどが入った小サイズの麺ドンブリを選ぶことに。すると、「これって、こんなに小さいのですが、それでもかまいませんか?」と念を押すように、両手で小さな輪をつくりながら示している。これでは話にならないと、すぐさま変更して大を注文する。
やがて運ばれて来たのは、私の想像とほぼ同様の内容のもので、ほっと安心する。この地でも、こんな麺料理ができるのだ。中身は豚肉、牛肉、エビなどに野菜類が入っている、いわゆるチャンポンなのである。長崎人の私には懐かしい思いで箸をつける。ス−プは長崎チャンポンのようにコクはないが、まあまあの味をしている。麺も少し違うが、文句は言えまい。分量も昼食には十分で、久々のアジア料理にお腹も満足の声をあげる。
チャンポン風ヌードル
料金は72クロ−ネ(1,440円)、これに手数料を加えて合計76.14クロ−ネ(1,522円)。なんと高いことだ。長崎チャンポンの相場は1杯700円だから、その2倍はする。北欧の物価は、概してこんなところである。
中央駅へ
とにかくお腹を満たしたところで、中央駅へ向かう。すでに午後の1時を過ぎているので、これから空港へ向かえば、頃合の時間になる。3時過ぎの出発だから慌てることはない。
雨に濡れた大通りの風景
駅に着くと、見慣れた5番ホ−ムから列車に乗り込む。と、それが偶然にも再びあの沈黙車両に乗り合わせてしまう。もう誰にも尋ねたりする用はないので、問題はない。静かに沈黙していると、10分で空港駅到着である。これでコペンの街の散策もすべて完了である。11年ぶりのサイクリングが果たせなかったのが残念だが、天候には勝てないので、あきらめるより仕方がない。
帰国の途
あとはホテルに戻って預けたバッグを受け取り、再度空港ロビ−へ出て荷物検査を受けると空港待合室で待機するばかりだ。問題なく検査を通過し、ゲ−トの待合室に腰を下ろす。乗客のほとんどは日本人客だ。この時期にも旅行客は結構多いようだ。私もそのうちの一人だが、それぞれどんな思いで帰国しているのだろう。私に負けないほどの素敵な思い出が残せたのだろうか?
そんなことを考えていると、搭乗案内のアナウンスが始まる。これで、私の旅もいよいよ終わりだ……。いや、まだまだ、これから12時間の長い空の旅が待っている。そう思いながら、オ−ロラの素敵な思い出がたっぷりと詰まったバッグを大事に抱えながら、ゆっくりと歩み始める。
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コペンハ−ゲン観光情報(2004年版)
(為替レート:DKK1=20円/05年1月現在)
・City Tour of Copenhagen
開催期間:5月15日〜9月30日、毎日、6種類の言語あり
出発時間:9:30、11:30、13:30
所要時間1.5時間、料金DKK130
・Grand tour of Copenhagen
王宮、衛兵交代、教会、議会、人魚像などコペンのハイライトをめぐる。
開催期間:1月1日〜12月31日、毎日、
出発時間:11:00、10月1日〜4月30日は土曜のみで13:30
所要時間2.5時間、料金DKK195
・Open Top Tours
二階がオ−プンになっている乗り降り自由の巡回観光バス
(詳しくはwww.sightseeing.dkのサイトで確認ください)
次の4コ−スがある。
*Blue Line……料金Dkk120
*Red Line……料金Dkk120
*Yellow Line……料金Dkk120
*All Lines……料金Dkk140
*Blue Line……料金Dkk120
*Green Line……All Linesのチケットのみ可
・Walking Tour
開催期間:7月1日〜8月31日の火、木、日曜日
出発時間:午後2時
所要時間1.5時間、料金DKK70
・City & Harbour Tour
市内の観光ポイントと運河などをめぐる。
開催期間:5月15日〜9月30日、毎日、
出発時間:9:30、11:30、13:30
所要時間2.5時間、料金DKK175
・Andersen tour
有名なデンマ−クの作家アンデルセンの故郷の美しい島を訪れる1日
ツア−。
開催期間:6月15日〜9月15日の木、日曜日
出発時間:8時
所要時間:8時間、料金DKK475
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(完)
(05年2月18日脱稿)
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