ベネズエラ(エンジェルフォール)の旅  N0.5






ギアナ高地の卓状台地





エンジェルフォールへのコース


(カナイマからボートでカラオ川を遡り、マユパで一時上陸して移動し、再びボートでカラ
オ川を遡る。上流のオーキッド島で上陸し朝食タイム。再びボートでカラオ川を遡り、途
中で支流のチュルン川に入ってさらに遡る。そしてラトン島の上陸地点で下船し、ジャン
グルウォークして展望台へ到着。見上げる先には念願のエンジェルフォールが!)



8.エンジェルフォール挑戦
エンジェルフォールの旅5日目。いよいよその日がやって来た。今日は待望のエンジェルフォールに挑戦する日だ。1000mという世界一の落差を誇るこの滝を見るためには、数々の壁を乗り越えなければならない。長時間のボートによる遡上と、さらなるジャングルウォークを走破しなければならないのだ。まさに“挑戦”するにふさわしい行程といえるのだ。


今朝は早暁4時半出発なので、寝過ごしが気にかかり、早々と3時半に目覚めて起床すると、洗面を済ませて柔軟体操を念入りに行い、身体をほぐして出発に備える。持参物は水、傘、合羽、カメラ、カメラのバッテリー、軍手、タオル、水着、虫よけ、虫刺され、カットバンなどで、これらをリュックに詰め込むと準備OKである。


いよいよ出発・・・ボート乗り場へ〜マユパ島へ
4時半になって外へ出ると、辺りは暗闇で真っ暗。だが、空は満天の星空で見事な月が浮かんでおり、地面を明るく照らしている。今日は良い天気だから、エンジェルフォールが拝めるのは間違いなさそうだ。とにかく雨の気配がないのでラッキーである。運がついていそうだ。そう思うと心が躍る。


全員集まったところでトラックへ乗り込み、暗い道を走り出す。20分ほど走ってボート乗り場に到着。そこでボートに乗り換え、マユパ島へ向けてカラオ川をさかのぼる。全員、合羽と救命胴衣で身をかため、狭い座席に腰を下ろすと、いざ出発である。辺りはまだ暗闇で周りの風景は見られないが、わずかにほの明るい曙光の中に岸辺のシルエットがかすかに浮かんで見える。


早朝の暗い中をトラックに乗って出発


暗い中、ボート乗り場で乗船。


(動画)曙光の空に浮かぶ岸辺のシルエット(カラオ川を走るボートの上から)


10分少々遡ってマユパ島へ上陸。ここから陸地を移動し、上流地点で再びボートに乗船。この区間は急流になるため下船して陸地移動を取るわけである。この区間の距離は徒歩だと30分かかる。幸いなことに、ブルドーザーが牽引する車両が用意されており、これに乗って移動する。ここは草原地帯になっているのだが、すごいでこぼこ道になっているので、普通の車両では通行できそうにない。そのため巨大タイヤのブルドザーを用意して牽引する方式を取っているのだろう。


マユパ島へ上陸


上りあがった所に大きなロッジが見える


ロッジの前にブルドーザーが牽引する車両が待っている

ガタゴトと揺られながら進んでいると、雲ひとつない夜明けの空の向こうにアウヤン・テプイ(エンジェルフォールのある卓状台地)のシルエットが見えてくる。ギアナ高地ならではのなんとも美しいシーンである。だが、まだまだ滝は遠いテプイの彼方だ。さらに進むと、その向こうにカラオ川が見えてくる。ここで下車し、ボート乗り場へ下って行く。


草原を上流に向かって移動。早暁の空にアウヤン・テプイが浮かぶ。


ブルドーザー運転中


(動画)マユパ島に上陸しブルドーザーで移動中



抜けるような青空の中に浮かぶアウヤン・テプイとカラオ川。この先から乗船。


(動画)マユパ島から眺める夜明けの風景。向こうにカラオ川が見える。


オーキッド島へ
ここから再びボートに乗り込み、鏡のようなカラオ川をかき分けながら遡る。底が抜けるような見事な青空の中、前方にはアウヤン・テプイがクローズアップされて迫って来る。まるで絵のような風景である。さらに進むと、今度はもやがかかった水域に入る。これはまさに水墨画の世界だ。このまま晴れていてくれよ。そう心に祈りながらボートは軽快に航行する。


白波を立てながら鏡のような水面を突っ走る


動画)カラオ川の急流をさかのぼる


(動画)前方にアウヤン・テプイを眺めながら鏡のようなカラオ川をさかのぼる



霧の中を進むボート。まるで水墨画の世界だ。


(動画)アウヤン・テプイがクローズアップされて迫って来る


(動画)アウヤン・テプイを横に見ながらカラオ川をさかのぼる



(動画)霧のカラオ川


時折、急流の浅瀬にさしかかり、ざんぶりと波しぶきを浴びながらエンジンを吹かして突き進んで行く。ドライバーも心得たもので、川のどの辺りが深いのか、浅いのかをよく熟知しており、川岸すれすれに寄ったり、真ん中を通ったりとコースを選びながら進んで行く。


(動画)オーキッド島に上陸。上のハウスで朝食。落葉が含むタンニンのせいで
    川がコーヒー色に。現地住民が住んでいる。



ボートの様子
この細長いボートは木製ボートで、幅がぎりぎりの2人がけの席が並んでいる。これに13人が乗ると満席状態となる。この木造船に船外機のエンジンを付けて走るのだが、静かな川面に軽快なエンジン音を響かせながら快走する。その速度は時速30km〜40kmぐらいのかなり早いスピートで突っ走る。そのため、早朝の冷たい空気を切って走るので、じっと座る身には寒さがこたえる。


私の場合、その寒さに備えて長袖シャツとその上にジャージの上着を着用し、この上にしぶきなどの水濡れに対応するため合羽上下を着用したが、これが風除けと防寒にもなる。寒さ対策では、この装備で十分であった。


ボートの底は床板はなく、まさに板底一枚下は地獄と言った様子である(大海ではないので心配無用だが・・・)。そのため急流の荒波を乗り越える時には、ざんぶりと水しぶきをかぶり、その水が船底に溜まって足が濡れる。後部座席はより多くの水が溜まることになる。そこで自発的にドライバーが備えている水かき用のカップで水をかき出す作業をしたりもした。


朝食はサンドイッチ
乗船地点から約45分かかってオーキッド島へ到着(6時30分)。ロッジ出発からここまで2時間が経過。ここで上陸して休憩ハウスに入り、テーブルで簡素な朝食となる。サンドの中身はハム・チーズで、他にビスケットなどが付けられており、これにコーヒー、ティーが用意される。これだけでお腹満腹となる。ここで約40分ほど過ごした後、青空トイレを済ませ、身軽くなったところで再出発だ。


これが朝食。ハムとチーズのサンドイッチ。


ラトンシート島へ
この朝食場所のオーキッド島がコースのほぼ中間地点で、ここからさらに上流へ遡り、その途中でエンジェルフォールの滝水が流れ込む支流のチュルン川へと入る。問題はこのチュルン川だが、乾季(11月〜4月ごろ)には水量が少なく、川底が浅くなってボートが入れない状況になる。したがってラトンシート島への上陸はできず、その結果、滝を見上げる直下の展望台へは行けず、オーキッド島止まりとなってしまう。そのため雨期でチュルン川の水かさが増すこの時期をわざわざ選んで訪れるわけだ。


水量豊富で順調に行けば、ここからラトンシート島の上陸地点まで約1時間半ぐらいで到着するそうだが、状況が悪いと2時間はかかるらしい。その日の状況次第でどうなるか分からないのだ。オーキッド島を出発して20分後、いよいよカラオ川から支流のチュルン川へ入る。


現地住民がのんびりと釣りをしている。赤い服の少年はドライバーの息子。

さあ、ここからが問題のコースである。乾季には水量が少なくて、もちろんボートは入れないが、雨季でも前日の降雨の如何によって水量が刻々と変化する。たまたま直近の雨量が少なければ川底は浅くなり、時には乗客が川に入ってボートを押し進めるケースもあると言う。さて、今日はどうなのか?


チュルン川に入ると、川幅は途端に狭くなり、両岸の緑のジャングルが迫ってくる。川の流れも右に左にと蛇行しており、前方のアウヤン・テプイが見え隠れしながら、息をのむような素晴らしい景観を見せてくれる。空と雲、川、ジャングル、テプイ(卓状台地)といった大自然の壮大な舞台装置が刻々と姿を変えながら目の前に迫って来る。青空に浮かぶアウヤン・テプイのシルエットが美しいスカイラインを描いている。こうした素晴らしい大自然の中に身を置く自分の幸せを身体いっぱいに感じ取る。


チュルン川に入る。向こうにアウヤン・テプイの姿が見える。


乗船時の服装:合羽の上に救命胴衣を着用。


霧が出てきた。大丈夫か?


浅瀬の急流。船底がつかえそうだ。


ここも浅瀬の急流


ジャングルの間にアウヤン・テプイが姿を現す


典型的なテプイ(卓状台地)の姿


アウヤン・テプイが千変万化の姿を見せる


川幅も狭くなってきた


雲がかかってきた


屏風のように立ちはだかるアウヤン・テプイ


ずいぶんと上流まで上って来た


雲も取れて真っ青な青空が・・・


アウヤン・テプイのシルエットが美しい


向こうにテプイの断崖が見える


上陸地点は間もなくだ


(動画)雲に包まれたアウヤン・テプイ



(動画)狭くなったチュルン川をさかのぼる)



(動画)蛇行するチュルン川をさかのぼる。前方にアウヤン・テプイが見え隠れする。



(動画)クローズアップするアウヤン・テプイ。


(動画)チュルン川の上流深くまで進んで来た。上陸地点も間もなくだ。



(動画)美しいアウヤン・テプイのスカイライン


一方、ドライバーは緊張の連続である。浅くなった川床に注意しながら深みを探して操船しなければならない。一歩間違えれば、ボートは座礁してしまう。船首にはパイロットが櫂を持って監視している。この川を熟知している者でなければ、とても操船できるものではない。大丈夫かと思われるほどの底の浅い流れをブ〜ン、ブ〜ンと船外機のエンジン音を響かせながら遡る。この浅瀬なのに船外機、大丈夫かな?と思わず後ろを振り返る。


こうして最後の荒波を乗り切ると、その向こうに上陸地点の川原が見えてくる。 はらはらしながらも、どうにかトラブルもなくチュルン川を上り切り、予定より早く1時間半かかっての無事到着となる(8時40分)。これでエンジェルフォール直下の展望台へ行けることが確定したわけだ。ほっとして大きく胸を撫で下ろす。出発地点のカナイマで最初にボートに乗った場所からここまで約4時間が経過している。


しぶきをあげて走るボート。上陸地点が近い。


(動画)上陸地点間近。最後の急流で水しぶきを浴びる


(次ページへつづく・・・)











inserted by FC2 system