ベネズエラ(エンジェルフォール)の旅  N0.4−1





旅のコース




ギアナ高地の卓状台地





7.カナイマへの道
エンジェルフォールの旅4日目。今朝は吊るし蚊帳の中で5時に起床。香取線香は焚いたものの、なんだか蚊が気になって落ち着かない一夜を過ごす。冷たい水で洗顔し、目を覚ます。前夜泊まったロッジもこのロッジも共に水洗トイレだが、トイレットペーパーは備えてあるものの、使用後は便器に流さず、常備のごみ箱に捨てるようになっている。トイレが詰まるからだそうだ。


今日の行動予定は空路による移動が続く。7時過ぎにこのキャンプを出発し、一昨日着陸したサバンナの中のルエパ飛行場へ向かい、そこから空路カバックの飛行場へ。そこからまた空路で本日の宿泊地カナイマへ移動する。カナイマはエンジェルフォール観光の前線基地の町である。この旅行のクライマックスであるエンジェルフォール挑戦の日がいよいよ明日に迫ったというわけだ。


壮大な景観
昨夜は真っ暗な中に到着し、ロッジの周囲の様子が皆目つかめていないので、いったいどんな環境にいるのか、今朝が楽しみである。ようやく明るくなって外に出てみると、爽やかで新鮮な朝の空気が流れている。呼吸する空気が実にうまい。これがピュアな地球本来の空気なのだと教えているようだ。


ゆっくりと辺りを見回すと、前面には屏風のように立ちふさがる大きな台地が見える。ソロロパン・テプイ(標高2500mの卓状台地)の雄姿なのだ。この山すそに広がる広い野っ原に、この野趣あふれるロッジがキノコのように建っている。いかにも人気のない秘境の中の秘境に立ち入ったという感じである。この最果ての秘境で出会う静かな早朝の風景に心洗われる思いである。今日の空も美しく、青く晴れ上がっている。


(動画)カバナヤンのマントパイ・キャンプの360度景観



野っ原にはこんなアリ塚がいっぱい



 カバナヤンのマントパイ・キャンプの全景。前にはソロロパン・テプイがそびえ、ギアナ高地の秘境の雰囲気がただよっている。左側前方の小山には食堂ロッジが、右側には宿泊
 ロッジが並ぶ。ロッジが並ぶ向こう側のすぐ下に川が流れている。




川が流れる
ロッジが並ぶすぐ側を川が流れている。幅20m足らずの川だが、ゆったりと穏やかに流れている。水温は思ったより冷たくなく、これだと水浴びしても寒くない感じだ。この水を汲み上げて濾過し、このロッジの用水として使っているのだ。この秘境だと周囲からの投棄物は一切ないはずだから、そのままでも飲用できそうな水である。ただ、泥などの混入物を濾す必要があるのだろう。


ロッジのすぐ裏手には浅く穏やかな川が流れている


川床に下りて撮影


川の向こうにソロロパン・テプイがそびえている


朝 食
食堂兼管理棟は離れた別棟のロッジになっているのだが、今朝見るとこの広い野っ原の片隅にある小高い丘の上にポツンと1軒だけ建っている。宿泊ロッジとは、ずいぶんと離れた位置になっている。昨夜はこのロッジで夕食を取るため、暗い中を穴ぽこに足を取られながら歩いたものだ。


早い出発を控えているため、早朝6時の朝食となる。メニューはトウモロコシパンにハム、チーズなど、これにスイカ、パパイヤ、オレンジなどのフルーツとジュースなどである。スイカはこの地でよく出されるフルーツだが、甘味は強くないが、まあまあの味でおいしくいただける。


朝食の食卓


朝食の料理


ルエパ飛行場へ
朝食を済ませると、2台のジープに分乗していざ出発。昨夜走った悪路を再び戻ってルエパへ向かう。昨夜の暗闇の走行と違って、今朝は明るい中を走行するので、その悪路の状況が丸見えである。今朝になってやっと検証できると言うわけだ。悪路を見ながらの、のろのろ運転だから、揺れに備えて準備ができるので、少しは楽な感じである。


その悪路だが、今朝分かったことは普通の地道ではなく、でこぼこの岩盤の上を走っているのである。だから揺れもただごとでは済まないわけだ。これなら無理もないと、異常な揺れの原因が分かって少々納得する。この岩盤道路だと、補修のしようがないだろう。


キャンプ場の端から岩盤の道が始まっている

車は急坂の瓦礫道を揺れながら上って行く。しばらく走って川に出ると、流れの中を水しぶきをあげながら突っ走る。運転席のフロントグラスはドバッと全面水をかぶり、一瞬水中に潜ったかのようである。ドライバーは川の中の走行を楽しんでいる風で、車中のわれわれも歓声をあげながら、この冒険走行を楽しんでいる。


(動画)でこぼこの岩盤道路を走行中



この瓦礫の悪路を上って行く


悪路を上る後続車


川の中にざぶん!


すごいしぶき!


前方がよく見えない


(動画)川の中を走行中。後続車もしぶきをあけながら続く。


川を抜けると息つく間もなく、今度は水たまりのできた岩盤上をガタン、ゴトンとこれでもかと憎らしいほど揺れながら徐行する。道の両側は想像どおり草むらが生い茂っており、昨夜のホタルの輝きはこの草むらの中から見えたのだ。


川床を走る


まだ続く岩盤道路


ここにも水たまりが・・・


(動画)でこぼこの岩盤道路を上って行く



(動画)がたがたのグランサバンナの中の道を走行中


ようやく悪路を抜け出ると、今度は雄大なグランサバンナが広がる中を走行し始める。ここを走り抜けて行くと、ゆるやかな丘陵地帯に出る。ここからの眺望が実に素晴らしく、ここでフォトストップをお願いする。眼下には広大なグランサバンナが広がり、右手には卓状台地が立ちふさがって素晴らしい景観をつくり出している。ギアナ高地の大自然を目の当たりにできる感動シーンである。


(動画)グランサバンナとテプイ(卓状台地)の雄大な景観




 丘の上から眺めたグランサバンナ(大草原)の雄大な景色。右側にはテプイ(卓状台地)が見える。




ジープはここからさらに走り、ルエパ飛行場を目指す。かなりの時間を走ってやっと懐かしの飛行場に到着。出発から2時間半もかかって9時40分になっている。


(動画)グランサバンナの中に放牧された羊の群れ


サバンナの中の飛行場で2時間待ち
ここからの飛行はチャーター便で、約束では9時に到着予定になっている。ところが飛行場には飛行機の姿は見えず、ただサバンナが静かに広がるだけで何の音沙汰もなし。ここは最果ての地で電波は届かず、ケイタイも役立たずである。だから飛行機の行動がつかめない。そう言えば、この地のロッジは電話もTVもなく、通信は無線で行っているようである。


状況が把握できないままに、当てどもなく飛行機の飛来をただただ待つしかない。最果ての秘境で飛行機の到着待ちを体験するなんて、滅多とできるものではなかろう。これも貴重なギアナ高地の旅のうちと思って、燦々と輝くサバンナの中を流れる草原の風にそよがれながら、のんびりと待つことにする。


しばらくすると、飛行場のはるか彼方から人影が見える。それがだんだんとこちらに近づいて来る。よく見ると、なんと小さな子供を連れながら乳飲み子を抱いた親子連れなのだ。現地の住民らしく、いったいこの広い草原の中のどこに住んでいるのだろう?と不思議に思えてくる。母親は裸足で、幼子を連れて遠距離を歩いてきた様子だ。


やっと我々の近くに来たかと思うと、目の前でぺたりと座り込んでしまう。1日に1本の着陸便があるかないか分からないこの草原の飛行場に、いったい何のために来たのだろう? 物乞いに来たのだろうか? 何か1本の長い棒を持って来て地面に置いている。これを売りに来たのだろうか? 見当がつかないまま様子を眺めている。


現地住民の母子3人連れ

すると仲間の1人が女性の裸足を見て、サンダルの履物をプレゼントする。彼女はお礼を述べる風でもなく、黙ったままサンダルを履き始める。履物などどうでもよいのかもしれない。他の仲間はお菓子をプレゼントしている。これも、にこりともしないで黙って受け取るだけ。高地に暮らすだけに、悠然とした様子である。


その後しばらくすると、今度は銃を持った2人の兵士が先の女性が来たのと同じ方向から近づいてくる。女性にしろ兵士にしろ、草原の彼方から忽然と姿を現すのだから不思議である。ベネズエラ国内では身代金目的の誘拐事件が多発している。まさか誘拐犯ではないだろうと信じてはいるのだが・・・。我々のところにやって来てもただ立ち止まっているだけで何の点検などもない。この兵士も何のために来たのか分からない。


やっと到着したチャーター機と兵士

こうして草原の中の珍客に遭遇しながら、ひたすらに待っていると、誰かが「あっ、飛行機のエンジン音が聞こえる!」と叫んでいる。静かに耳を傾けて聞くと、確かにエンジン音のようだ。間もなく、確かなエンジン音を響かせながら飛行機が近づいて来る。やがて滑走路の向こうに小さな機影が見え始める。やっとチャーター便が到着したのだ。約束の時間より2時間遅れの11時40分の飛来である。


(動画)・・・2時間遅れでやっとチャーター機が到着。遠くでよく分かりにくい。


(次ページへつづく)












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