ベネズエラ(エンジェルフォール)の旅  N0.





旅のコース




ギアナ高地の卓状台地





6.カバナヤンへの道
エンジェルフォールの旅3日目。今朝は6時に起床。昨夜は10時過ぎに就寝したので、睡眠十分である。時差やら睡眠不足が、これでやっと解消となる。私はこうしてゆっくり起きているが、実はこの時間からヘリでロライマ山頂に行くオプションがスタートしているのだ。希望者のみで、参加者8名は4名ずつ二手に分かれて1台のヘリで飛行するわけである。その第一陣は早朝6時の出発なのだ。


(動画)宿泊キャンプの朝の風景



卓状台地・ロライマ山の山頂へ
先にも述べたように、このロライマ山はコナンドイルの小説「失われた世界(ロストワールド)」の舞台となった有名な卓状台地で標高は2810m。3014mのネブリナに次ぐ高さを誇っている。このロライマ山の山頂へは自然の細道ができていて、意外と簡単に徒歩で登れるそうだ。


今朝はこのロライマ山に最寄りのこの宿泊キャンプからヘリで山頂着陸をトライすると言うのだ。高山のため気象条件に恵まれないと山頂着陸は困難らしく、着陸しても滞在時間はごく短く、10分足らずとのこと。条件が悪ければ、いったん飛び立っても引き返す場合があるそうで、その場合でも費用は不返還とのこと。私の場合、滞在時間がみじか過ぎることやその他を考量して、当初から不参加を決め込んでいる。

 
(動画)ロライマ山行きの第2陣がヘリで飛び立つ


今朝は好天に恵まれて第2陣ともロライマ頂上に無事着陸し、念願の目的を果たした。帰着したメンバーの中には、その迫力あるシーンが見れて感動と興奮に酔いしれ、エンジェルフォールが見れなくてもこれで本望とまで感想を漏らしていた。太古の岩石の上に立ち、その別世界の風景に痛く感動したのだろう。このロライマ山はポピュラーな台地らしく、よく登山ツアーが組まれて楽しんでいるようだ。次のような登山記録が残されている。

・ロライマ山に登るツアーもある。⇒ロライマ登山記録 


帽子がない
朝、荷物をまとめていると、昨日まで被っていた帽子がいくら探しても見当たらない。直射日光の強いギアナ高地では帽子なしでは過ごせない。はたと困ってしまう。また、どこかに置き忘れたかな?とため息がもれる。時折、出会う店で帽子は売ってはいるのだが・・・。これまでよく海外で置き忘れが多いのだ。NYのペンステーションで帽子、ブルガリアのバスの中に上着ジャケット、コペンハーゲンでは大事な防寒のダウンジャケットなどである。


自分の不甲斐なさにあきれながら、そのことを周りに話すと、タオルを被ったら?とアドバイスを受け、それならと姉さんかぶりスタイルでタオルを被ってみる。それが予想外に感じがよく、意外な発見である。首筋から耳まで隠れるので日焼け防止にもなる。以後、アラビアのローレンス気取りでタオル帽子で過ごすことにする。


その後の顛末だが、やはり昨日のワゴン車の中に帽子を置き忘れていたらしく、後になって忘れ物としてドライバーから届けられ、無事舞い戻った。しかし、その頃はタオル帽子の感触が気に入っており、以後、旅の最後までタオル帽子で過ごすことになる。


朝 食
出発から約40分かかって第1陣が無事帰着し、次いで第2陣が飛び立つ。ヘリはこのキャンプに隣接する空き地から飛び立つので便利である。見送ったところで朝食となる。主食はトウモロコシの粉で作られたパン。これはベネズエラの国民食となっているそうで、少しもちもちした風味のあるものである。これにハムとエッグ、スイカなどを盛っていただく。


朝食はトウモロコシパン、ハム、エッグ、フルーツなど。


食卓にはフルーツが盛りだくさん


ハスぺの谷
午前9時前、キャンプを出発してハスぺの谷へ向かう。今日はワゴン車がジープと入れ替わり、ジープ2台で走行する。これからの悪路に備えてのことだろう。車種はトヨタのランドクルーザーである。この地にまで日本製の車が入っているのには驚かされる。ジープは昨日来た道を戻りながら突っ走る。途中、第2陣のヘリと合流し、全員そろってハスペへ向かう。1台のジープの定員は8人。それに6人ずつ分乗して走行する。


昨日走ったグランサバンナの中のドライブウェーを再び快適に走行する。半時間少々走ってハスペの谷に到着。下車すると、森の中を分け入ってどんどん奥へ進んで行く。やがて川の音が聞こえたかと思うと、木陰の向こうに赤い川が流れているのが見える。これがハスペの谷なのだ。ここには穏やかな階段状の滝があり、格好の水遊び場となっている。早速、一行の数人が水着姿で水遊びに興じている。


(動画)サンタエレナのキャンプからハスペの谷へ向かう途中。グランサバンナの中を
    突っ走る。



森の中をどんどん奥へ進んで行く


ハスペの谷の表示板。JASPE=スペイン語でハスペと発音。


穏やかな階段状の滝が・・・


碧玉(ジャスパー:Jasper)の一枚岩でできている川床。赤くつるつるしている。


乾いた川床にチョウが憩う


(動画)ハスペの谷



側の木陰では手作りの民芸品を売っている

流れが赤く見えるのは、川床が鉄分などを含む碧玉(ジャスパー:Jasper)の一枚岩でできているためである。川床は平面でつるつると滑らかで、地元の人たちはここで腹這いになって腹を膨らませ、そのお腹で“腹スキー”をして遊ぶのだそうだ。それほど川床はつるつると滑らかなのだ。この川床の上で記念の集合写真を撮る。


給油とトイレ休憩
ハスペの谷で1時間以上を過ごした一行は、再びドライブウェーを走り、カモイランのガソリンスタンドに向かう。途中、検問所がり、銃を持った兵士がやって来て車内点検を行う。子犬を抱いた兵士もいるなど、検問とはいえ、かなりのんびりしたムードである。こんなギアナの奥地でも検問があるのには驚きである。麻薬輸送のルートにでもなっているのだろうか? 確かにブラジル国境に近い位置ではあるのだが・・・。何事もなく再び走り出したジープはハスペの谷から1時間ほどかかってカモイランのガソリンスタンドに到着。ここで給油&トイレ休憩である。


意外な所に検問所が・・・


子犬を大事に抱く兵士


車内を検査する兵士


トイレ休憩した場所


昼食はパスタ
ガソリンスタンドから少し移動したところで、ランチとなる。ロッジ風のレストランで昼食が始まる。好みの料理を言って盛り合わせてもらう。ここではなんと、珍しくもスパゲッティが用意されている。ギアナ高地初のスパにみんな喜んで皿に盛ってもらう。他にはチキン、ビーフ、煮豆、ポテト、ライスといろいろ盛りだくさんである。満足と満腹の昼食に身体も元気回復である。


昼食のご馳走


オーナーがクリスチャンなのか、室内に祭壇が置かれている。


みんなの荷物をシートで包みジープの屋根に載せて走る。だからスーツケース
は持ち込めない。



ジープの車内。座席はベンチ式で片側に4人ずつ座り計8人が定員。


ペタンク
食後、外に出てみると、地元の大人たちがロッジ横の広場で何やら楽しんでいる。近寄って見ると、なんとペタンクを楽しんでいるではないか! 砲丸投げのような鉄球を目標に向かって投げ合い、目標への至近距離を競う単純な球技だ。これはそもそもフランス生まれの球技なのだが、それが元スペイン領のこの地で見られるとは驚きである。しかも、結構若い人たちが楽しんでいる。普通は老人たちが楽しむゲームなのだが・・・。楽しみの少ないこの地では、唯一の憩いのゲームなのかもしれない。


ロッジの横手は広場になっている。


その広場でペタンクを楽しんでいる。


チナクの滝
人気のスパゲッティでお腹を満たした後は、チナクの滝へ向けて移動する。昨日着陸したルエパの飛行場を通り過ぎ、ボート乗り場のあるイボリボ村へ向けて走行する。


(動画)チナクの滝へ向かってサバンナの中を走行中



飛行場を通り過ぎると舗装道路は途切れ、がたぴしの悪路に入る。そこを30分ほど走ってイボリボ村へ到着。そこからボート乗り場へ移動し、7人乗りボートに乗って幅の広いアポンワオ川を高速で突っ走る。白波を立てながら高速で走るボートは爽快そのものだが、このまま突っ走ればチナクの滝に真っ逆さまに落下する。この先が滝になっているのだ。


ボート乗り場


川を下る僚船


(動画)チナクの滝に向かってアポンワオ川を航行中


川を15分ほど走って上陸地点に到着すると、陸地を15分ほどてくてく歩いて滝へ向かう。間もなくカフェみたいなロッジが見えてくる。その位置が滝を見下ろすビューポイントになっており、豪快にしぶきをあげながら落下するチナクの滝が見下ろせる。幅70m、落差105mの大滝である。ここから山道を20分ほど下りて行けば、この滝を川底から見上げるポイントに出るらしい。このチナクの滝は、別名を「アポンワオの滝」とも呼ばれている。


ここが上陸地点



チナクの滝の別名・アポンワオの滝の表示板。SALTO=スペイン語で滝の意。


豪快に落下するチナクの滝(幅70m、落差105m)


(動画)豪快に流れ落ちるチナクの滝(別名:アポンワオの滝)



滝の上空には薄い虹が・・・

このギアナ高地には、こうした大小さまざまの川と滝が無数と言ってよいほど点在しており、その結果、ギアナ高地の旅は多くの滝見物と卓状台地の見物が主となっている。その最たるものが最大目的のエンジェルフォールというわけだ。


突然のシャワー
滝見物に見とれていると、知らぬ間に頭上に暗雲垂れ込め、突然の土砂降りシャワーに見舞われる。運よく、ロッジがあるので、ここで雨宿り。飲食もしないのに少々気が引ける。ギアナのシャワーは局地的なので、黒い雨雲のかたまりが通り過ぎれば晴れ間の空に戻る。15分も待てば通過するので、さほど問題はない。これがボートの上でなくてラッキーである。雨期と言っても、日本の梅雨のように終日降るのではなく、時折、シャワーがやって来ると言った様子である。いわゆるスコールである。これはアフリカや南国でも同様のようである。


カバナヤンへ
ひとしきり降ったシャワーも止んで、雨上がりの野道をボート乗り場へ引き返す。再びボートに乗ってアポンワオ川を今度はさかのぼり、出発点のイボリボ村に上陸。そこからジープに乗って今夜の宿泊地カバナヤンへ移動する。朝9時前にサンタエレナを出発してから、ギアナ高地のグランサバンナを駆け抜け、かなりの距離を走行したことになる。イボリボ村を出発したのは、もう夕方5時をとっくに過ぎている。6時には日没となるので先を急ぐ。


アポンワオ川をさかのぼる


すさまじい悪路
ここからカバナヤンまでの6kmの道は、かなりの悪路だと事前に予告されている。アフリカのサバンナでサファリの体験をしているので、多分その程度だろうと高をくくっていたのだが、いざ走り出してみると、そのすさまじさには完全脱帽である。こんな体験は初めてのことで、先へ進むにつれてその悪路の度合は一段とすごさを増してくる。


とにかく、上下はもちろん、前後左右に飛び跳ねるように車体が揺れ動くのである。さかとんぼになるのかと思うほどの急坂があったり、尻底から跳ねあげられたり、横転するのかと思うほど左右に傾いたりと、とにかくすごい翻弄ぶりである。座席はベンチだし、手で何かを掴もうにも取っ手が何もないのである。だから、対面の座席に足を伸ばしてつっぱり、シートの端をしっかり握って耐えるしかない。すでに陽はとっぷりと暮れて外は真っ暗になっている。だから、どんな悪路なのか見ることさえできず、それが一層不安をかきたてる。


ホタルの光
しかし、この悪路の中にも心を和ませてくれる風流な夜の風景が見られる。それはなんと、この大自然の暗闇の中に多数のホタルが飛び交っているのだ。道路の両側には多分草むらがあるらしく、その中でチカチカとホタルの光が輝いているのだ。思わず車内に歓声があがり、その美しさに心打たれる。このギアナ高地でホタルに出遭うとは、まさに想定外のことである。光が強いところをみると、多分大型のホタルなのだろう。


だがこの大揺れの車内では、その風流さをのんびりと味わう余裕などない。窓外のホタルに目をやりながらも、飛ばされないようにしっかりと身体は支えている。悪路だからスピードは出せず、のろのろ運転で時間がかかる。こうしてやっとキャンプにたどり着いたのが夜の7時前である。暗黒の中の悪路から解放されて、やれやれと言った気分である。とにかく奥深い地の果てまで来たという感じである。


キャンプの様子
辺りは暗くて何も分からない。お尻を撫でながらジープから降り立つと、そこは原っぱになっており、薄明かりの中に幾つものロッジが横一列に行儀よく並んでいるのが見える。チェックインも何もなく、その場で立ったまま部屋の割り当てが始まる。奥地なので送電はなく、自家発電のみ。そのため夜の10時には停電となる。飲料水などは、前の川から汲みあげて濾過したもの。だから水も貴重品だ。


割り当てのロッジに行くと、入口にはカギも何もなく、ただ留め金があるだけ。これほどの奥地ともなれば、動物以外の不審な訪問客の心配はないから施錠も不要というのだろう。真っ暗な室内に入って手探りで電気のスイッチを探し、やっと点灯。


室内の様子を眺め回すと、ベッドの上の天井から懐かしい蚊帳がぶら下げてある。壁は自然石を組んで積み上げられた感じの石壁で自然の趣が丸出しである。天井は丸太を組んで草ぶきの屋根になっている。そして、ベッド脇の台には大きなローソクが用意されている。


ベッドの上には吊るし蚊帳が・・・。自然石の壁が野趣のムードを醸し出す。


板戸の窓は外とつうつう

洗面トイレを見るとシャワーのみで、もちろんお湯はなしで水のみ。水は不自由ながらもトイレは水洗だから高級設備と言ってよい。前夜の宿も水洗だったのは少々驚きである。ふと壁を見上げると、なんと四角の小窓は何の覆いもなく外とつうつうである。これでは蚊や虫の出入りは自由自在だ。その自然さに驚きながら部屋の窓を確認すると、鎧戸になった板戸がはめてあるだけで、ネットは張られていない。これも外部とつうつうで蚊の出入りは自由自在だ。(翌朝の話では、この小窓から鳥が侵入して朝の挨拶を受けた部屋が2部屋あった。)


シャワーは水だけ。トイレは水洗で文句なし。


(動画)キャンプの部屋の様子


香取線香がない!
これは大変とばかりに、香取線香を焚こうとバッグから取り出しにかかる。ところが、いくら探しても大事な蚊取り線香が見当たらない。これは困ったことになったものだと、少々うろたえてしまう。またもや置き忘れか?と自己嫌悪に陥ってしまう。おかしいな? 今朝、宿を出る時には部屋を見回して忘れ物がないか確認したはずなのに、いったどうして?と不思議でならない。大きな包みだから目立つのだ。


あきらめの境地で、食事の時にそのことを話すと、親切にも2人の仲間から線香を分けてもらうことに。そのうちの1人からは滞在分の線香をいただくことになって感謝感激である。お陰で命拾いができ、安堵の胸を撫で下ろす。
(その後の顛末だが、翌日になってドライバーがシートの下に転がっていた包みを発見し、渡してくれた。それが私の香取線香の包みであった!奇跡の生還に驚いていると、昨夜の悪路の大揺れでシート下に置いていたバッグの口から飛び出ていたらしい。よくチャックを閉めていなかったのが原因のようだ。これで一件落着。)


夕 食
7時半になって夕食の時間となり、ロッジから100mぐらい離れた食堂ロッジへ出かける。暗闇の中を穴ぽこに足を取られたりしながらロッジにたどり着く。雨の日だと移動が大変だろうが、今夜のように晴天だと、夜空に満天の星をいただきながら優雅に歩行できる。南国の夜空に輝く星は一段と美しく、天体に吸い込まれるようである。


夕食はお好みのスパゲッティにビーフ、ポテトサラダと、文句なしのメニュー。これにビールを傾けながらいただく料理はこの上なく美味しい。


夕食の料理はボリュームたっぷり。

部屋に戻ると、水のシャワーは少し寒そうなので水で身体を拭くだけにとどめる。お湯がないため、本日は洗濯もなしである。あとはすることなく、ただ大自然の懐に抱かれながら蚊帳の張られた床に就くだけ。9時過ぎのことである。


電気を消して耳をすますと、川のせせらぎの音が聞こえてくる。側に川が流れているらしい。しばらくすると、入口ドアがす〜っと音もなく開くので何事ならんと驚いて近寄ると、簡単な留め金だけでロックがないため自然の風で開いたようだ。とにかく野趣あふれる場所で眠りにつく。


(次ページは「カナイマへの道」編です)












inserted by FC2 system