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  N0.7
(&ベトナム)




トンレサップ湖へ
食後のお腹が落ち着いたところで、いよいよ最後の観光となるトンレサップ湖遊覧へ向けて出発である。ここから乗物が変わり、現地名物のシクロ(人力車)に乗っての移動となる。いろいろと趣向を凝らしてうれしいのだが、残念ながら一行全員が乗れる台数がなく、往路と帰路に分かれて乗車することになる。商売とはいえ、気温36度もある昼下がりの炎天下に客を乗せて走るシクロマンも大変だ。まずは前半のメンバ−がシクロで出発する。帰路のメンバ−は涼しいバスで移動する。シクロの走行距離はここから15分程度のオ−ルドマ−ケット前まである。
 

乗車を待つシクロの列。日本の昔の人力車とそっくり。

私を含む帰路班はバスで先回りしてオ−ルドマ−ケット前に到着。下車してみると、すぐ横手にはシェムリアップ川が流れており、それに沿って地道の道路が走っている。その道路沿いの片側にマ−ケットが立ち並んで、昼下がりののどかな風景を見せている。幅20mほどの川は混濁した水をゆっくりと流しながら静かに横たわっている。
 

オールドマーケット前のストリート。右側にシェムリアップ川が流れる。

一軒の瀟洒な土産品店を見つけ、店内に入って冷やかしてみる。母娘で営んでいる店のようで、お客はだれもいない。民芸品を中心に陳列している店だが、入りはしたものの買いたい物は見当たらない。そこで、片言の英語が話せる若い娘さんと雑談しながら時を過ごす。日本人客が結構多いらしく、よく買ってくれるという。やはり、欧米人、韓国人が多いという。
 

ここを退散して木陰に休んでいると、向こうから往路班がシクロに乗ってやってくる姿が見え始める。みなさん、ご到着である。


シクロの一団が到着。手をあげているのはガイド君。

一行がそろったところで、再びバスは走り出す。殺風景な郊外の田舎道をしばらく走っていると、左手に朱色の大きなテント張りが見え、その周りに大勢の人だかりができている。何事だろう?と好奇の目を向けていると、バスは道をそれてテントの近くに停車する。ここで結婚式があっているらしい。
 

地元の結婚式風景
珍しい光景に出会ったものだと、みんなは下車してその様子に見入る。なんと、この新婚さんはガイド君の知り合いだそうで、それでみんなを案内してくれたのだ。ちょうど新婚夫妻と取り巻き美女たちが勢揃いして記念撮影が始まるところである。それに便乗して、こちらも撮影させてもらう。一行の中には一緒に並んで記念撮影する者もいて、大はしゃぎしている。主役の新郎新婦はなかなかの美男美女で、よくお似合いのカップルである。心から幸せを祈るばかりだ。
 

中央の二人が新郎・新婦。そして取り巻きの美女たちが並ぶ。

正装した女性たちの服装は原色の色あざやかなもので、それがまた強烈な現地の陽光に映えて女性をいっそう引き立たせている。空き地に張られた大きなテントの中には、長テ−ブルが並べられて宴会の真っ最中だ。今はひとしきり終わった感じで、なごやかな雰囲気が流れている。お客の総勢はざっと100人は超えているだろうか? これでは招待費用も大変だろう。この規模の宴席で、いったいどれほどの費用がかかるものか、尋ねる機会を失った。
 

宴席たけなわ


大勢の招待客

現地の珍しい結婚披露宴を垣間見た後、再びバスに乗って湖へ向かう。やがて、広い川岸に出ると、遊覧船の発着場に到着。足場の悪い空き地を通って船へ向かう。そこには20人乗りぐらいの小型の遊覧船が何艘か係留されている。そのうちの一艘に乗っていよいよ出動である。軽いエンジン音を響かせながら、浅い水路を進んで行く。この船は救命胴着も何もなさそうだけど、有事の場合には大丈夫なのだろうか?
 

遊覧船の発着場。右の人影が見えるボートで遊覧。




トンレサップ湖の大きさは琵琶湖の15倍
このトンレサップ湖はカンボジアの中西部に位置する東南アジア最大の淡水湖で、約5000年前の海面上昇によってできたものである。その魚種も豊富で、まさにカンボジアの心臓部のような存在になっている。その面積は乾季(11月〜4月)では約3,300kuで水深1〜2mだが、これが雨季(5月〜10月)になると最大11,600kuに拡大し、水深も最大14m、貯水容量は450億立方メ−トルにもなるという。実に乾季の3.5倍の大きさに拡大するわけで、その広さは琵琶湖の15倍に相当するという。ガイド君がそのことを自慢げに説明する。
 

この湖からトンレサップ川が首都プノンペンの方へ流れ出ているのだが、それがこの地点でメコン河と合流する。ところが雨季になればこのメコン河の水位が約10m上昇するため、それがトンレサップ川に逆流し、それにつれてトンレサップ湖の水位も約10m上昇するために湖の面積が乾季の3〜4倍に拡大するのである。
 

こうした例年の湖水増減変動に備えて、湖岸の住民は高床式の水上家屋に居住し、雨季になれば陸上の家に移動するなど、湖水環境の変化に対応しながら暮らしている。約40年前ごろまでは淡水域としては世界最高の単位面積当たりの漁獲高を誇っており、これまでカンボジアの総人口の10%以上に当たる120万人が、この湖での漁業によって生計を営んできたという。しかし、それも四半世紀におよぶ内戦、近年の森林伐採による土砂流入、それに乱獲・違法漁業などによって生態系が変化し、水資源の減少が危惧されている。
 

高床式住居の風景
今のこの時季はようやく乾季に入ったばかりで、まだ湖水はたっぷりと広がって満々としている。船が進むにつれて川岸に高床式の平屋建て家屋が並んでいるのが見える。なかには粗雑な家屋もあり、大丈夫なのかと心配されるものも見受けられる。乾季になれば、この辺りは干上がって車が通れるようになるのだという。水位差が10mもあればうなずける話である。途中、引き船に引かれて沖合から移動する水上家屋に出会う。船上に建てられた大きな家のようだが、乾季に備えて早々に移動を開始したのだろうか?
 

高床式住宅の家並み。乾季にはこの辺りは干上がってしまう。


同 上


何やら市が立っているようだ。人だかりが見える。


曳航船に引かれてただ今岸辺へ移動中

沖に近づくと、両岸にはジャングルが生い茂って水路も狭くなってくる。そこを抜けて水平線が見え始めたかと思うと、一気に視界が広がって湖へ出る。


この水路の先に巨大湖が広がっている

その広大な湖面を見ていると、とても湖とは思えない風景で、大洋にまぎれ込んだような錯覚を覚える。陽光にきらめく果てしない水面を眺めていると、琵琶湖の15倍という広さがしみじみと実感されてくる。遠く水平線の彼方に首都プノンペンがあるそうで、そこまで高速船で5時間の船の旅(運賃は25米ドル)だそうだ。ただし、便数が少ないので、屋根の上まで鈴なりの乗客になるらしく、かなりスリル感のある船旅のようだ。



大海原と見まがうばかりの果てしない湖面。正面の遥か彼方に首都プノンペンがある。




沖合に出たところでボ−トはUタ−ンし、再び水路をめざして引き返し始める。前方の湖岸にはジャングルに覆われた低い陸地が横に伸び、その奥の彼方にやや小高く平べったい山が見える。これが高さ140mのプノン・クロム山で、この頂上にもプノン・クロム寺院の遺跡があるという。その頂上から眺めるトンレサップ湖の景色はまた素晴らしいらしい。だが、頂上まで20分の距離を歩いて登らなければならないという。




右手の遠くにプノン・クロム山が見える。その方向の水路を遡れば発着場に戻る。



オールドマーケット
船着き場に無事到着すると、再びバスに乗ってシェムリアップに向かう。しばらく走って、往路に休憩したオ−ルドマ−ケット前に来ると、そこでストップ。ここで40分ほどこの界隈の自由見学となる。だが、とにかく暑くて汗だくの状態で、歩き回る気力がない。それでも所在ないので、付近をぶらぶら回ってみる。道路沿いには日用雑貨、土産品などの店が軒を連ねているが、昼下がりの暑さで客の姿も見られない。持て余した店主は、狭い店の奥でぼんやりと過ごしている。
 

細い路地を奥へ入って行くと、奥まった薄暗いところに生鮮食料品の市場が広がっており、主に野菜、果物、肉類、雑貨などが所狭しと並んでいる。中には丸裸にむしった鶏をずらりと並べている店もあったりして、珍しい光景が見られる。まだこの時間帯には、買い物客の姿は少ない。オ−ルドマ−ケットの配置は、この生鮮市場を取り囲むようにして、その周囲に小さな店舗が並んでいるという構成になっている。ここに来れば何でも揃うス−パ−マ−ケットのような存在なのだろう。
 

豊富な生鮮食料品が並ぶ


むしられた鶏の陳列

早い夕食
ようやく出発の時間となり、帰路班はここから市中までシクロに乗ることになる。ところが、この暑さでげんなりした私は、シクロ乗りを辞退して涼しいバスを選ぶことにする。こうして市街地へ戻ると、今度はレストランで早めの夕食となる。18時20分発のホ−チミン行きに乗るのだが、その前に夕食はこの地で取ることになっている。そのため、まだ午後3時ごろだというのに、無理な夕食となってしまう。
 

ここのレストランでは、名物麺クイティウが出されたが、ほぼフォ−に似た麺料理である。昼食から間がないので、少しずつ賞味していただく。こうして早めの夕食を済ませると、シェムリアップ空港へ向かう。20分ほどの距離だから、あっという間に到着。いよいよ、この好感のもてる素晴らしいガイド君ともお別れである。こうして、数々の感動を与えてくれたカンボジアの旅も、これで幕を閉じることになる。
 

ホーチミン市へ
手荷物検査の折に、女性係官から呼び止められ、「ツ・メ・キ・リ」と日本語で言いながら手を差し出している。渡せというのだろうか? 没収されるのかと思いながらバッグから取り出して渡すと、その小さな爪切りを握ってしげしげと眺め回し、その挙げ句「OK」と言って返してくれる。これまで国内はもちろん、どこの空港でもチェックを受けたことはないのに、このシェムリアップの空港で指摘されるとは意外なことである。よく見逃さず、チェックするものだと、意外なところで感心する。一応、爪切りの機内持ち込みは不可にはなっているのだが……。
 

そんな思いを抱きながら機上の人となり、すぐ隣国のホ−チミン市へ向かって飛び立っていく。1時間足らずの空の旅である。



(次ページは「ベトナム・ホーチミン市・メコン河観光」編です)










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