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  N0.2
(&ベトナム)








アンコール・トム 
食後の小休止を部屋で終えると、9時過ぎから午前の観光開始である。アンコ−ル・トムやタ・ブロ−ム寺院をめぐるのだ。快晴の青空の下、陽は高く昇り、南国の強い陽射しが容赦なく照りつけている。これは暑くなりそうだ。たっぷりの水とサングラス、カメラを用意して出かける。バスは今朝と同じ道をアンコ−ル寺院を目指して走行する。アンコ−ル・トムは同じ方向で、アンコ−ル・ワットの北1.5kmの位置にある。
 

遺跡群に通じる道路の途中で、係官のチェックを受ける。車内に乗り込む係官に、みんな一斉に証明パスを手に掲げて提示する。検問を終えてしばらく走り、アンコ−ル・ワットを横目に見ながら通り過ぎると、その先にアンコ−ル・トム遺跡の入口である南大門が見えてくる。そこで下車し、観光が始まる。この大門を抜ける道路には観光客のバスや車が列をつくっている。結構、車の往来が多く、注意が必要だ。車に気を取られていると、門の方から象の行列がのそりのそりとやって来る。背中に人を乗せる観光用の象なのだ。のそりのそりとしているが、歩幅が広いので人の歩く速度より速い。
 

南大門を通過するくるまの列。左右には欄干が見える。


象のお出まし・・・

南大門と欄干
象をやり過ごしてから、南大門付近の遺跡を見学する。ここでの見所は、環濠に掛けられた橋の欄干と南大門である。この石造りの壮大な欄干だが、ガイド君の説明によるとコブラの胴体を54体の神々が抱いているのだという。確かに、その頭部を見ると膨らんだコブラの頭をしており、この時代でもコブラが強烈な印象を人々に与えていたのが想像される。この神々の中には頭部や腕の部分が欠損した石像もあり、痛々しい思いがする。次の写真は左側の欄干だが、これと反対側の右側欄干には蛇を抱える54体の阿修羅が並んでいる。これらの蛇はナ−ガと呼ばれる。
 

コブラの胴体を抱く54体の神々が彫られた欄干

この迫力満点の欄干を見た後、南大門へ進む。この門は四面塔になっており、3mもあるかという観世音菩薩の顔が四面に取り付けられていて壮観である。門の側に立って見上げると、雲ひとつない青空の天空に浮かぶ観世音菩薩の神々しい四面顔に思わず手を合わせずにはいられない。


南大門の正面


石塔の四面に彫られた観世音菩薩の像

このトム寺院には「勝利の門」や「死者の門」など5つの門があるそうだが、この有名な南大門が見所となっている。これだけの見学で、早くも汗だくの状態である。今日は大変な観光になりそうだ。ここから再びバスに乗って寺院構内をバイヨン寺院に向けて移動する。乗る間もないほど、1、2分で寺院前に到着する。
 

トム寺院の構造
このアンコ−ル・トム(大きな町を意味する)は、アンコ−ル・ワット建設の半世紀後の12世紀末に大乗仏教を篤信するクメ−ル軍のジャヤヴァルマン7世によって建設された宗教都城で、高さ8mの城壁によって囲まれた1辺が約3kmもある正方形の王都である。その周囲を環濠に囲まれたこの王都の中心にあるのが観世音菩薩を祀るバイヨン寺院である。アンコ−ル・ワットがヒンズ−教のヴィシュヌ神を祀っているのとは対照的である。
 

その構造は東西南北に走る基軸道路、王宮と諸寺院、それを取り巻く城壁と環濠からなっている。中心にあるバイヨン寺院には高さ45mの中央祠堂がそびえ、それを取り囲むように観世音菩薩の顔をした巨大な仏面が50あまりも林立して見る者を圧倒する。そして寺院のギャラリ−壁面には、当時の軍隊や戦闘の様子、それに生活の様子などが見事なレリ−フで彫り連ねられ、その美しい曲線美のある浮き彫りは見とれるばかりである。この遺跡も日本チ−ムが4年あまりの歳月をかけて修復工事を行い、99年に完了したものである。
 

おびただしい壁面のレリーフ
降り立った場所からその全景を眺めてみると、なんだか自然の岩山のような見かけで、アンコ−ル・ワットのような優美な姿は見られない。入口門らしいものもなく、木陰の地面を通り抜けてなんとなく寺院の中へ入り込む感じである。


バイヨン寺院の全景


中央尖塔を囲むように四面仏が林立する

入ってすぐの左側のギャラリ−へ進むと、その高い壁面はいっぱいに彫られた見事なレリ−フのオンパレ−ドである。コ−ナ−を曲がって次の壁面に進むと、そこも丹念に彫られたレリ−フで埋め尽くされている。その長大でおびただしいレリ−フの数々には圧倒されるばかりで、それがまた肉厚に浮き彫りされているので一層立体感があって真に迫るものがある。これらレリ−フの主題はチャンパとの闘いと当時の日常生活である。
 

美しいアプサラの踊り。アプサラダンスの元祖?


戦いのレリーフ


高い壁面にレリーフがびっしり


列柱が残っているところをみれば、ここには屋根があったのだろう。

この壁面レリ−フのある狭い回廊は、押し寄せる観光客で押し合いへし合いの状況である。ただここを見て回るだけで、汗がどっと噴き出てくる。こんな汗の経験は初めてである。噴き出る汗を拭いながら、階段を上って上の階層に出る。


林立する四面塔
そこのテラスには、所狭しと観世音菩薩の四面塔が立ち並び、見る者に鬼気を感じさせるほど迫ってくる。反面、その笑みをたたえた柔和な菩薩像に囲まれていると、この世の極楽浄土にいるような感じにひたれるから不思議である。見事に彫り込んだ無数の石をよくぞこれほど積み上げたものである。その人間のエネルギ−には驚かされてしまう。
 

林立する四面仏塔。それぞれ菩薩の顔が異なるのが面白い。


同 上

ガイド君が、ここが撮影ポイントの一つだと案内してくれる。そこは祠堂の入口から反対側の入口を通して、その外側正面に立つ菩薩像の顔の部分が額縁にはめられたように見えるのである。なかなか珍しいアングルである。ここをバックに、みんな記念撮影をしようとすると、正面に人影が見えて妨害されたりする。その度に、ガイド君が懸命になってその人影に開けてもらうよう頼み込んでいる。
 

入口が額縁の働きをして菩薩の顔を浮き上がらせている。

こうして一巡りすると、階段を下りて今度は北面から寺院の外に出る。この位置からもう一度寺院の全体像を撮影しておこう。


北側から見た全景

とにかく汗だらだらで、木陰に憩いながらバスの到着を待つ。バスに乗ると冷房が効いているので、ほっと一息つける。これだけ汗が出れば十分な水分の補給が必要だ。バスはここからすぐ近くの王宮に向かう。その前の広場に有名な「象のテラス」があるというのだ。テラス前にさしかかると、ここでフォトストップである。 
 

圧巻の「象のテラス」
降り立って見ると、高さ3m、長さ300mもある長い側壁には、その名のとおり50〜60頭の象の群れが見事な浮き彫りで描かれている。その行列の図は圧巻で、見る者は思わず感嘆の声をあげずにはいられない。これらのレリ−フの主題は象による狩りの様子を表しているそうだ。王宮前広場に面したこのテラスは王族の閲兵などに使われたらしい。王宮自体は木造建築だったらしく、今ではその姿は見られない。



これが「象のテラス」。その壮大なレリーフには圧倒される。





(次は「タ・プローム」編につづく)










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