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  No.4
(ラトビア・リガ編)




5.ラトビアの首都リガへ
 
三日目。今朝は6時半起床。気になる空を眺めると、雨こそ降っていないが厚い雲が垂れ込めた曇り空である。今日は隣国ラトビアの首都・リガへ移動の日だ。10時発の国際高速バスを利用して向かうのだが、果たしてスム−ズに行くのだろうか? 長距離バスはドイツのロマンティック街道を走るヨ−ロッパバスやトルコ国内旅行の時以来である。バスタ−ミナルからの出発なのだが、下見もしていないので早めに出かけて様子を見ることにしよう。
 

バスターミナルへ
豪勢な朝食を十分にいただき、少ない荷物をまとめると出発準備OKだ。1階の広いロビ−に下りて行き、チェックアウトをすませる。玄関前を見ると客待ちのタクシ−が止まっている。これ幸いにこれに飛び乗ってタ−ミナルまで行くことにしよう。予めレセプションでタ−ミナルまでのタクシ−料金を尋ねると、約15リタス(600円)だろうと言う。これはタクシ−を利用する場合、ドライバ−から法外な料金をぼられないための予防措置なのだ。
 

そこでドライバ−と交渉が始まる。「アウト−ブス ストティス,キアク カイノウヤ?(バスタ−ミナルまでいくらですか?)」と尋ねると、「20リタス」と英語で答える。これでは聞いた話とは違うと思い、ロビ−へ引き返してホテルマンをとらまえ「ドライバ−にバスタ−ミナルまで行くように頼んでくれませんか?」と頼んでみる。すると快く引き受けてくれ、ドライバ−のところまでやって来て何やら話している。そこで、すかさず「いくらなんですか?」と尋ねてもらうと、「15リタス」と言う返事が返ってくる。最初の料金より5リタスも安くなっている。案の定、私の作戦は成功に終わる。彼らはホテルマンには弱いのだ。いったんにらまれると、商売にならないからだ。メ−タ−のないタクシ−は、この手にかぎる。こうしてタクシ−は細い入り組んだ路地を走り抜けながら無事タ−ミナルへ到着。10分ぐらいと短い距離だ。
 

タ−ミナルの建物は最近改築されたらしく、外観も内部も新しくすっきりした感じである。待合いにはベンチがたっぷりと用意され、周囲には案内所や長距離バスの事務所、それに切符売りのカウンタ−が並んでいる。この時間には混雑は見られない。私が利用するのは「EURO LINE」というヨ−ロッパ各国への長距離バスを運行する会社のバスである。料金は当地から隣国リガまで40リタス(1,600円)、約5時間の行程である。それにしては割安な料金である。
 






ヴィリニュスのバスターミナル














ターミナルの内部










早速、ユ−ロラインの事務所に行き、乗り場や所要時間などを尋ねて確認する。座席指定になっているので並ぶ必要はない。確認が終わったところで、昼食用のパンなどを調達したい。そこで外へ出てみると、玄関前に小さな店が1軒あるだけ。パンや飲物を売っているのだが、パン1個が20〜30円ぐらいと値段は安い。もっとちゃんとした店舗はないのかと辺りを探索してみると、1軒の食品店を発見。そこでジャムパンらしきもの1個にジュ−ス1本を購入する。これに昨日買ったバナナを加えれば、昼食としては十分だろう。
 

タ−ミナルの玄関から反対側に回ってみると、そこは交通の激しい大通りになっており、その道路向かいにはクリ−ム色のヴィリニュス駅の駅舎がある。ここは旧市街の南端に位置する場所だが、ヴィリニュスの交通の要所なのだ。駅を見たいが、バッグを持つ身では動きがとりにくく、あきらめることにする。
 





 ヴィリニュス駅










1時間の余裕時間を見込んで来たので、時間はたっぷりある。ようやく出発時間の10時に近づいたので乗り場に行くと、そこにはすでにユ−ロラインのバスが止まっている。乗車の前に記念撮影をしてから、おもむろに乗車して指定された12番のシ−トに腰を下ろす。国際高速バスとはいえ、日本の観光バスと同様の車体である。一応、鉄道はあるのだが、リガまでは隔日運行だったり、所要時間もバスより2時間も長くかかるなど利便性に欠けている。その点、高速バスは毎日4便もあり、はるかに便利である。
 





 これが高速バス











高速バスでリガへ
バスはゆっくりとタ−ミナルを離れて市街地を抜け、郊外へ出るとハイウェ−に乗る。2車線のフリ−ウェイで料金所はなく、行き交う車の数も少ない。制限時速90kmのようで、森と草原の広がる美しい風景の中をノンストップで突っ走る。ドライバ−は2人で交代運転である。それほど変化に富むコ−スではないが、時には美しい並木の道があったり、一面に真っ黄色の菜の花畑が広がっていたりと、乗客とドライバ−の目を優しく癒してくれる風景ではある。そんな風景を二人掛けの座席に1人で陣取り、のんびり眺めながら時を過ごす。乗客はみんなで14、5人と少ない。ロシア語や現地語が飛び交う。他国から来た旅行者は私以外にはいないようだ。
 
















美しい草原の風景


一面に広がる菜の花畑


途中休憩
こんな中を走ること2時間少々、急にスピ−ドが落ちて、とあるドライブインに入る。食事とトイレ休憩なのだ。ここで20分の休憩をとると言う。のんびりとしたこの場所には素朴な木造建ての食事処があり、ちょっとしたスナックが食べられる。中に入ってみると、何やらぬくぬくとした調理品が揃えてある。折角だからと、その中からチキンとポテトを選んで少しばかり包んでもらう。これに買ったパンもあるので、ちょっと良過ぎるランチである。車内に持ち込んでゆっくりと食事する。ほとんどの乗客やドライバ−たちも食事に出かけている。



 途中休憩したドライブイン。右側の建物が食堂。






 ドライブイン前の道路




国境検問所
のんびりとしたもので、ドライバ−たちは20分以上経ってからやっと車に戻ってくる。みんなお腹を満たしたところで、やおら出発である。それからしばらく走ると、国境検問所に到着。やはり検問があるのだ。シェンゲン協定加入国だったらフリ−パスなのだが、ここはそうは行かないようだ。検問所前でストップして待っていると、女性の係管が車内に乗って来てみんなのパスポ−トを集めて行く。待つこと10分少々、係管は事務所から戻り、パスポ−トを戻してくれる。見ると、リトアニア出国とラトビア入国のスタンプが押されている。
 





ヴィリニュス国境の検問所














EU諸国住民はこの下に並べとの表示









再びバスは国境を越えてリガに向け走り出す。人為的に設けられた国境線を越えても、広がる自然の風景やただよう空気はいささかの変化もない。人間どもはどうして無用なボ−ダ−ラインを設けるのかしら?とでも問いかけているようだ。無意味な国境線を通過するために、無用な時間を消費する。人間の世界は、ほんとにややこしい。それはそうと、もう行程の半分ほどは過ぎたのだろうか?
 

リガ到着
時折、対向車とすれ違いながら小人数の乗客を乗せた国際バスは、のどかなハイウェ−をひた走り続ける。かなり走ったところで、ようやくリガの市街地が見え始めてバスの旅もそろそろ終わりに近づく。街の中心部に入って大きな橋にさしかかると、林立する教会の尖塔が見えてくる。この街にはなんと多くの教会があるのだろう? その多さに驚嘆していると、バスは間もなくリガのバスタ−ミナルへ到着である。時刻は午後2時30分、休憩も入れて4時間半の行程である。すっきりとしたこぎれいなタ−ミナルである。早速、小額をラッツ通貨に両替する。レ−トは1ラッツ=210円。
 





リガのバスターミナル










 




 ターミナルの外観











リガのこと
ここラトビアの首都リガの街は、人口約80万を抱えるバルト3国随一の大都市で、地理的にもこれら3国の中心的な位置にあって、経済的にもリ−ドする存在になっている。それだけに、より開放的で都会の雰囲気が感じられる街である。
 

その歴史を見れば、1201年にブレ−メンの僧正アルベルトがここに上陸し、要塞を築いたことに始まる。これ以来、リガはドイツ人によるバルト地方征服の根拠地となった。13世紀末にはドイツを中心とするいわゆるハンザ同盟に加盟し、この街は急速に発展して行く。現在の旧市街を彩る教会や商家などの建築物はこの頃に建てられたものがほとんどである。その後、16世紀から19世紀にかけてポ−ランド、スウェ−デン、帝政ロシアの支配下に入り、ヨ−ロッパへの窓としてペテログラ−ド、モスクワに次ぐ大都市に成長する。91年の独立後は復興もめざましく、中世の魅力を残す旧市街は観光客で賑わいを見せている。
 

ホテルへ
ここでの宿泊ホテルは分かりやすい場所で、地図で見るとオペラハウスの真ん前でトラムの電停前でもある。このタ−ミナルからさほど遠くない地点だが、まずは案内所で尋ねてみよう。係にホテル名を告げて、そこへの行き方を尋ねると、「歩いて5分のところで近いですよ。地下道を渡って行けば素敵な通りに出ます。そこを真っ直ぐ行けばすぐです。」と教えてくれる。地図で見るより意外と近いのだ。礼を言って玄関を出ると、目の前をトラムが走っている。ここから地下道を通って、教えられたとおりに歩いて行く。
 





ターミナル前をトラムが走る









地下道を上がると、なるほど瀟洒な建物が並ぶ静かなストリ−トが現れる。






静かなヴァリニュ通り










このヴァリニュ通りをしばらく進んで二つ目の角を右へ曲がればそこは電車の走る大通りで、そのコ−ナ−に目指すホテルが見える。老舗の風格のあるホテルで、早速ヴァ−チャ−を提示してチェックインする。と同時に、2日後のタ−リン行き高速バスのチケットを預かっていないかを尋ねる。すると、「預かっていません。」という返事。そこでヴァ−チャ−を見せ、ここに連絡してみてくれと頼むと、その場で電話してくれ、すぐに持参することが分かる。
 

とりあえず、部屋に入って一息つくとしよう。老舗のホテルだけに、部屋の設備などは今一つだが、地理的な利便がよさそうだ。しばらく憩っていると、ドアをノックする者がいる。「どなたですか?」と問い質すが応答がない。そこで覗き穴から覗いてみると、ホテルマンが立っている。早速と、チケットを持参してくれたのだ。これで明後日のタ−リン行きも心配なしだ。
 

付近散策
一息ついたところで、付近の散策に出かけてみよう。目の前にオペラハウスがあるので、この機会に何か観賞してみたい。そこでレセプションで催しのことを尋ねると、直接オペラハウスで聞かれたが確実でしょうと言う。それもそうだと思い、玄関を出て目の前の電車通りを横切り、白亜の国立オペラ座を目指す。その横手のチケット売り場をのぞいてみると、本日の上演はお休みで、明晩がタイミング良くバレ−になっている。演目は何か分からないが、とにかく生のバレ−が見られれば言うことはない。
 





白亜の国立オペラ座










窓口でチケットはあるかと尋ねると、座席表を示しながら、1階はこの後方の端の席しか空いてないと言う。それで躊躇なく、その席をゲットする。料金は5ラッツ(1050円)と意外に安い。明日の晩を楽しみにしながら、隣接の公園を散策する。このオペラ座は横手側はトラムが走る大通りに面しているが、その正面は素敵な雰囲気の緑あふれる公園に囲まれている。そしてこの公園を左右に分断しながらボ−トが浮かぶ水路が静かに流れ、いっそう趣を添えている。公園の一角には女性像の立つしゃれた噴水があり、その周辺には今を盛りに赤、黄、白、紫のとりどりの花が咲き揃って春の訪れを告げている。
 





オペラ座前に広がる素敵な公園
手前には水路が、遠くには自由記念碑が見える












 素敵な噴水















色とりどりの美しい花










この公園をぶらりと北に進むと、自由記念碑の立つ大通りに出る。ラトビアのシンボルでもあるこの記念碑は1935年にラトビアの独立を記念して建てられたもので、その高さは51m。塔の上にはラトビアの3つの地域の連合を表わす3つの星を空高く掲げる女神の像ミルダが立っている。ソ連時代にも壊されることはなかったそうだが、これに近づくだけでシベリア送りとなる反体制の象徴としての記念碑でもある。今、真の独立を勝ち取った人々は、この碑の前をどんな気持ちで通り抜けているのだろう? この記念碑の両端には昔の軍服を着た2人の衛兵が直立しながら守っている。
 





 自由記念碑
 高さ51m









この通りの西側続きには旧市街の中央部を南北に2分する形でカリチュ通りが走っている。古い石畳のこの通りには、モダンな建物と中世の趣を残す建物とが混在しながら静かなたたずまいを見せている。少し先へ進むと右手に広場が現れ、そこに台車に乗せた露天の土産品店がずらりと並んでいる。その店主はほとんどがおばちゃんたちで、申し合わせたように例の琥珀のアクセサリ−をびっしりと並べて売っている。女性にはひやかして回るのも楽しいに違いない。
 





旧市街の中央部を走るカリチュ通り









広場の横にカフェがあり、そこで好みのバニラ・アイスクリ−ムを買って腰掛け、道行く人たちを眺めながらしばし憩う。若い男女の通行人が多いようだ。小休止した後は、さらに奥へと歩き進み、左へ曲がってホテルの方向へ戻って行く。通りを歩いていると、ふと教会の尖塔が現れ、その度に上を見上げることになって、自然と天国への階段を探してしまう。この街では、それには不自由しない。

 




通りの先には尖塔が見える










当て外れの夕食
ホテルへ引き返し始めたものの、お腹も空いて夕食を取りたくなる。スパゲッティを食べようとヴィリニュスでも探したのだが、なかなかイタリアンレストランが見当たらない。この地ではどうなのだろう? そこで、通りの露店商のおばさんに尋ねてみる。すると、火薬塔の方向にイタリアンレストランがあると言う。教えられたとおりその方向へ歩いて行くと、あった! 


そのレストランは通りの角にあり、高級感のただよう店で、入口に掲示されているメニュ−を見ているとウェイタ−が現れる。そこで「スパゲッティ・ナポリタンはありますか?」と尋ねると、「あります。」と言う返事。そこで席へ案内され座っていると、別のウェイタ−がメニュ−を持って現れる。「ナポリタンはどれですか?」と尋ねると、そのペ−ジを開いて見せてくれる。見ると、確かにそう書いてある。これなら間違いないと、それを注文することにする。
 

久々のスパゲッティに期待を寄せながら待っていると、やがて料理が運ばれてくる。それを見た瞬間、わが目を疑がってしまう。なんと、スパゲッティとは似ても似つかぬ大きなピザが載っているではないか! きっと、他の客と間違ったのだろうと思い、「これ違いますよ。」と告げると、「いえ、これがナポリタンです。」と言う。確かに、上にはトマト風のソ−スが載ってはいるのだが……。そこで再度、スパゲッティはないのかと尋ねると、「ありません。」と言う。最初のウェイタ−の話とは全然違う。
 

すでにビ−ルも飲み始めていたことでもあるし、ここで押し問答してもしようがないので、好みでもない大きなピザをやむなく食べる羽目に。それにしても、こんなに大きなピザを残さず食べれるのだろうか? 迷いながら食べ始めるが、厚みがそれほどないのでなんとか行けそうである。ビ−ルを飲み飲み、時間をかけてどうにか食べ上げることに成功。これほど大きなピザを丸ごと食べたのは初体験である。
 

後で思うに、この注文違いは、どうもメニュ−の見間違いにあったようだ。ピザのセクションを開かれて、そこにあるナポリタンの文字だけを確認し、それがピザの種類だということを知らなかったのだと思う。当方にも、ウェイタ−にも責任ありという感じで、これでは双方引き分けかな?と思ってあきらめるしかない。料金5ラッツ(1050円)を払って不満足な夕食を終え、ホテルへ戻る。お腹こそ満腹になったものの、後味の悪い思いをしながらシャワ−を浴び、ゆっくりとくつろいだ後、ラトビアの夢を結ぶことにする。


(次ぺージは「リガ市内観光」編です。)










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