No.2
(リトアニア・ヴィリニュス編)




4.ヴィリニュス市内観光

二日目。7時起床。外は寒そうな曇り空である。雨が降らなければいいのだが……。そんな心配を抱きながら、身仕度を整え1階食堂へ。バイキング方式で用意された朝食はなかなかのデラックスで、卵料理、ハム類、ソ−セ−ジ類、サラダ類、パン類、飲物類、果物類と豊富にそろっている。豊かな気分になりながら、少しずつ皿に盛り分けていただく。
 

杉原千畝氏のこと
今日は市内観光だが、その前にこの地では決して忘れてはならない人物がいることを述べておこう。それは「杉原千畝」氏である。ここで彼のことについて少し記しておこう。彼は今では“日本のシンドラ−”と呼ばれ、その功績を評価して、ここヴィリニュスでは彼の名を冠した通りまで生まれている。1940年第二次世界大戦のさなか、リトアニアの日本領事代理をしていた杉原氏は、ナチスの迫害を逃れ日本通過に活路を求めてきたユダヤ人に、本国の指示に背いてまでビザを発行し、約6千人もの尊い命を救った外交官なのである。約半月の間、昼夜を分かたず、腕は腫れ上がり、万年筆が折れてもなお書き続けたと言う。リトアニア第二の都市カウナスにある旧日本領事館は、今では「杉原記念館」として保存され、両国を結ぶきずなとなっている。また、彼を記念して桜の植樹も行われている。(詳しくは、このサイトをご参照)
 

杉原記念碑
豪華な朝食に満足しながら玄関を出てみると、バルチック地方の冷たい朝の空気が肌を刺す。思わず襟首を立てながら周囲を散策してみる。市街から少しはずれにあるこの周辺は住宅もなく、ネリス川を前にひかえてのどかな風景が広がっている。すぐ横手の小高い丘の上にちょっとした公園みたいな場所がある。その一角に杉原氏の母校・早稲田大学が彼を記念して建立した記念碑がある。そして、その周辺に記念の桜の木が植樹されている。まだ苗木は小さいが、10年もすれば美しい花を咲かせてくれることだろう。
 





 杉原記念碑
















早稲田大学の顕彰文










そのすぐ先の広場には、手の先から平和の鳩が飛び立つ女性像が立っている。ホテルの係員に尋ねてもよく知らないが、恐らく平和を祈る像なのだろう。






平和の女性像
手の先からはハトが飛び立っている








この川沿いののどかで緑多い風景を連続写真に収めておこう。



 ホテル前ののどかな風景。左端が宿泊ホテル。前方にはネリス川が流れている。(記念碑の場所から眺めた風景)




部屋に戻って窓外の景色を眺めると、その向こうには旧市街の風景が広がっている。ここの旧市街は東ヨ−ロッパでも一番広く、タ−リンやリガのようにはっきりとした境界がなく、その範囲も判然としない。その上、旧市街を走る公共交通機関もほとんどなく、観光の見所へは細く入りくんだ不規則な道を徒歩で歩くしかない。だが、今日はシティ・ツア−だから問題なさそうだ。




 ホテル横から眺めた風景。右側の白い建物がショッピングセンター。左側の建物も店舗が入っている。





市内観光へ
10時前になってレセプションから電話があり、ツア−の出迎えがすでに来ていると言う。用意はできていたので、すぐに1階へ下りて行く。ドライバ−に案内され、私一人を乗せて車は走り出す。生憎と、小糠雨が降り始めている。この地方独特の雨の降り方だ。昨年、ベルギ−を訪れた際も同様の降り方である。走り出して間もなく、大聖堂前の広場に到着。そこには参加者数人がすでに集まっており、ガイドが出迎えてくれる。彼女はヴィリニュス大学生で、この6月に卒業とのことである。英語、ロシア語など数ヶ国語を操る快活陽気な美人お嬢さんである。
 

ツア−はここからのスタ−トで、各自が出身国、名前をガイドに告げて紹介し合い、それが終わるといよいよ出発である。参加者は老英国人カップル、ル−マニア人など欧米人6人と私で、流暢で早口の英語によるガイドが始まる。
 

大聖堂
まずは目の前の大聖堂から。真ん前に立ちはだかるように立つ高さ53mの鐘楼をもつ白亜の大聖堂は、この町のシンボル的存在となっており、屋根には3聖人を掲げている。その歴史は古く13世紀に建てられ、その後建て直されたり、増改築を行ったりして今日に至っている。中へは入らないのかと尋ねると、ここは外観を眺めるだけで次へ向かうと言う。後でもっと美しい教会へ案内しますと言う。
 

 街のシンボル・大聖堂の全景

このツア−は下車して観光するのは聖ペテロ&パウロ教会、聖アンナ教会、Amber  gallery、それに夜明けの門の4ヶ所で、他は観光要所をめぐりながら車上から眺めるだけである。車は大聖堂前からゲディミノ大通りを西に向かって進み、ルキシキュウ広場を通り、KGB博物館を眺めながら国会議事堂まで一直線に進む。この大通りは現代ヴィリニュスのメインストリ−トで、ビルや様々な商店などが軒を連ね、行き交う車で混雑している。走行する車内から写真が撮れないのが残念である。
 





 メインストリート
 ゲディミノ大通り(車中より)










聖ペテロ&パウロ教会
この大通りの西端には、数万人の市民がソ連軍に素手の抵抗をして守り抜いたと言う国会議事堂がある。そこからネリス川沿いに東へ進むと戦士の像を乗せたグリ−ン・ブリッジがあり、さらに進んで街の東はずれにある聖ペテロ&パウロ教会へ向かう。






兵士の像が立つグリーンブリッジ















 橋の付近の様子
 トロリーバスが多い














 同 上










ここで下車して見学する。屋根には低い3つの塔を乗せながらひっそりとただずむ教会だが、1668年から7年間かけて造られたこの街を代表するバロックの記念碑的な建築物だそうだ。
 





 聖ペテロ&パウロ教会










何気なく一歩中に入ると、周りの壁面から天井にいたるまでびっしりと装飾された、おびただしい見事な漆喰彫刻群に圧倒されてしまう。その数なんと2000以上、30年あまりかけて造られたというその彫刻群は、聖人をはじめ天使や想像上の獣、植物など多岐にわたるデザインで構成されている。惜しいかな、中央祭壇部分は補修工事中で足場が組まれており、折角の彫刻が見られない。ガイド嬢が後で美しい教会を案内すると言っていたのは、この教会のことだったのだ。
 






 壮観な漆喰彫刻群
 天井には絵画が、後方にはパイプオルガンが。





















 壁面の彫刻群












     イコンを囲む壁面彫刻                    人間最後には骸骨になる



(次ページへつづく・・・)











inserted by FC2 system