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(南アフリカ・ケニア・タンザニア・ジンバブエ・ザンビア・ボツワナ)



(タンザニ編)






7.セレンゲティ国立公園(タンザニア)・・・・今度の旅のハイライト
 
小雨が・・・
6日目の朝。今朝は6時半に起床。天候が気になり、窓のカ−テンを開いて外を眺めると、おや? あたり一面が霧に覆われて、小雨まで降っているではないか! これはどうしたことだっ、昨日の夕方はあんなに晴れていたのに! 洗面を済ませ、念のためロビ−のテラスに出てみると、そこから眺望されるあのクレ−タ−の絶景は一面の霧に包まれて何も見えない。あゝ、なんとしたことだ! ついてないこと、はなはだしい。落胆の淵に突き落とされる感じで、自然に翻弄される人間の哀れさが身にしむ。ほんとに、天候の変化はめまぐるしい。
 

とにかく7時過ぎには朝食を済ませて出発準備が整う。そこで、フロントマンに「この雨では、今日のサファリは無理でしょうかね?」と尋ねると、彼は即座に「ノ−プロブレム。クレ−タ−の中に下りれば、そこの天気は問題ありませんよ。」と心強いお告げ。なるほど、ここは標高が高い火口縁になっているので、霧がかかりやすいのだ。今日こそは、その言葉を信じて出かけよう。でも、一段と雨足がひどくなってくるぞ。さあ、どうなることだ。
 

案の定、みんなが集まったところで、1組の老カップルが今日の行動を断念する。下山すれば、下は晴れているかもしれないとの言にも耳を貸さず、先日のアンボセリのトラブルの体験から安全をとって断念するという。そこで一行は2人を残し、降りしきる雨の中を4台のジ−プに分乗し、心の隅に多少の不安を抱えながら出発となる。午前8時である。
 

セレンゲティ国立公園サファリの醍醐味
今日は終日世界遺産のセレンゲティ国立公園でサファリを楽しむ予定である。さあ、どんな野性の動物たちに出会うことができるのだろうか。期待に胸をふくらませて、といいたいところだが、この雨ではどうなることか、そちらのほうが気がかりである。くるまは標高2300mの火口縁に建つロッジから、斜面のなだらかな坂道を下りながら進んで行く。すると、次第に霧が薄れ、雨も止み始めるではないか! なるほど、あのフロントマンが予測したとおりである。これはお見事。
 

さらに下りて行くと、視界が一気に開け、そこには晴れ渡った青空がいっぱいに広がっている。これまでの霧と雨が、まったくウソのようである。山上と下界では、こうも違うのだ! そして前方眼下には、果てしなく広がるセレンゲティ大草原が朝日を受けながら静かに展開しているではないか。「う〜ん、ナイスビュ−!」と思わず声がもれる。そこでドライバ−に頼み、フォトストップをかける。下車すると、早速写真撮りだ。外に出ると、アフリカの朝の爽やかな風が頬を撫でる。これだと、すばらしいサファリができそうだ。いやがうえにも心がはずむ。




 霧と雨を抜けて斜面を下りると、前方には晴れ渡った青空の中にセレンゲティの大草原が広がっている。




再び乗車すると赤茶けた地道を下り抜け、大草原の中を走る1本道を突っ走る。かなり走ったところで、ポ−ルに何やら表示盤がぶら下ったゲ−トらしきものが現れる。ここで一時ストップ。下車してその表示盤を見上げると、「WELLCOME  TO SERENGETI NATIONAL PARK」と書かれている。つまり、ここがンゴロンゴロ自然保護区とセレンゲティ国立公園との境界になるわけだ。
 





ンゴロンゴロとセレンゲティ公園の 境界線ゲート











セレンゲティ国立公園のこと
ここセレンゲティ国立公園は、東アフリカの数多い国立公園のなかでも、最もよく知られた公園の一つで、その面積は林を含めて14763kuと東京・神奈川・埼玉・千葉を合わせた面積よりもまだ1000kuも広い。セレンゲティとはマサイ語で「果てしない平原」というそうだが、その名のとおり果てしない大草原なのだ。この草原の主役は、あの大移動で知られるヌ−で、ここに棲む約300万頭の草食動物のうち約1/3が、見栄えのしないヌ−なのである。このヌ−は、毎年4〜8月にかけて、セレンゲティ大草原から北のケニアにあるマサイ・マラ国立公園の草を求めて約500kmもの大移動を行うが、その壮観な様子はTV報道などで有名である。そして、12〜1月にはセレンゲティの同じ草原に戻って来るというから、動物の本能には驚嘆させられる。
 

ヌーの大群に遭遇
この門をくぐって、一直線に伸びる道をぐんぐんと走り抜けて行く。アフリカは広い、そしてセレンゲティも広い。しばらくすると、右手前方遠くに砂煙が舞い上がっているのが目に入る。そう、ヌ−の群れが走り去っているらしい。くるまは、そちらを目指してどんどん近づいて行く。すると、わあ〜っ、ヌ−の大群だ! これが何度も映像の中で見たことのあるヌ−の群れなのだ。それを目の当りにして、みんなは一気にエキサイトする。その数、その群れに圧倒される。その1頭1頭を見れば、牛ともヤギともつかない中途半端な格好をしていて見栄えはしないものの、それが群れをなし、大群になると、集団の美をつくりだすものである。




 このヌーの大群をご覧あれ!  中央遠くに砂煙があがっているのが見えるが、早くも移動を開始した一団がいるようだ。




今は3月の末、間もなく始まる大移動に備えて、そろそろ集結し始めているところらしい。ヌ−の大群を見るのにはグッド・タイミングである。これが移動した後であれば、ここでは見られず、マサイ・マラに出かけなければならないことになる。遠くに砂煙が上がっているが、早くも一部の群れが移動し始めているのだろうか。それにしても、この大集団をいったいどのヌ−が、どのようにして指揮統率し、方向を定めてコントロ−ルしながら移動するのだろうか。集団をかき乱したり、殺し合ったりするような不心得ヌ−もいないようだし、これは自然の摩訶不思議である。同じように群れ(家庭や社会)をつくって生活するわれわれ人間どもも、このように、だれいうとはなしに、自然のうちにまとまりのある社会をつくり出せないものだろうか。人間社会には相互に殺し合ったりなど、それをかき乱す不心得者のなんと多いことか……。
 

ひとしきり撮影が終わると、くるまは付近の小高い丘に上って止まる。そこから一望する大草原の景観はすばらしく、さすがにヌ−の群れも小さく見える。






丘の上から草原を見渡す















手前にインパラの群れが・・・。
遠くに砂煙をあげてヌーの群れが駆け抜けている。







シマウマの群れ
ここを下りて再びくるまは走り出す。しばらくすると、小さな池の周りにシマウマの群れを発見。彼らは水飲みにやってきたらしい。まるで絵の具でペイントしたように鮮やかな白と黒の線が、くっきりと美しい縞模様を描き出している。太く黒い縦縞と、背中から尾にかけて横縞がある。彼らがたむろする姿が、なんとものどかな風景をつくり出している。
 





水飲み場に集まったシマウマ










キリンと遭遇
ここを離れて、さらに進んで行く。すると今度は、左手遠くに数頭のキリンを発見。そこでくるまは道からそれて草原の中に突っ込んで行く。すると段差1mほどの土手が現れる。さて、どうする? とドライバ−の顔を見ていると、こんなの平気といわんばかりに、車体を斜め方向に進めながら土手を乗り切ろうとする。くるまは左右に揺れながら、ゆっくりと乗り上げて無事通過する。さすがに四輪駆動のジ−プはすごい威力を持っている。
 

キリンは割りと臆病な動物だ。そこでくるまは、そっと至近距離まで接近する。それまで木の枝をはんでいたようだが、こちらの接近に気づいて逃げ始める。さあ、今のうちに撮影だ!目の前にしてみると、まるで動くオモチャのようだ。その長くスマ−トな脚と首、モザイクのような美しい網目模様、そして筆の穂先のような尻尾をなびかせている。この2頭のキリンは、カップルなのだろうか?
 





スマートなキリンさまのお通りだ









再び道に戻って進んで行く。今度はハイエナの群れだ。草原の彼方に数頭が散らばっている。ちょっと撮影には遠すぎる。だが、念のために撮っておこう。さらに進んで行くと、おお、今度はガゼルの群れだ。今となっては、ガゼルなど目じゃないといった感じである。もっと、大物に出会いたい。そんな気持ちがつのってくる。
 





ガゼルの群れ











ここにもヌーの大群が・・・
さらに奥へ進んで行くと、草原の遠くに石垣を積み上げた土手のような黒いものが見える。あれはなんだろう。くるまが近づくにつれて、その全貌が次第に明らかになる。それはヌ−の大群なのだ! 先程の群れとは、そのスケ−ルの大きさが一段と違う。ヌ−またヌ−の群れで、草原はヌ−の海になっている。なんとも壮観きわまりない光景である。その黒っぽい色のヌ−の中に、シマウマの群れまで混じり合っている。彼らは仲良し組のようだ。一緒に移動するつもりなのだろうか。さてこの大集団、いったいいつの日、大移動を開始するのだろうか? その瞬間を見届けたい衝動に駆られる。



 大草原に群れるヌーの大群。出発の時はいつ?




ライオンと遭遇
そんな気持ちを振り切り、くるまはさらに前進する。そして今度は細い分岐路を右へ取り、1mの高さに生い茂る草深い草原へ入り込んでいく。しばらく進むと、前方の草むらの中に1台のジ−プが止まっている。何かいるらしい。くるまは、そこへ接近して行く。やはり、いたのだ! ライオン親子の群れのようだ。そこにはたてがみを生やした雄ライオンの姿も見られる。まだ貫禄十分のたてがみではないが、けっこう伸びている。彼らは、草むらの中でのんびり横たわって憩っている様子だ。そのうちの1頭には、首輪ベルトが巻かれている。ん? この野性の動物たちの中に、人工的な匂いのするこのベルトがされているとは、いったいなぜ?聞くところによると、各群れのグル−プの1頭にだけ首輪ベルトをしているそうだ。それは公園管理者が行なうもので、各グル−プの草原での動きを探知するために、発信機を付けているらしい。  
 





草むらで憩うライオンのファミリー










草むらの中をさらに少しばかり先へ進んで行くと、草かげからこつ然とライオンが現れる。おや? 今度は1頭だけだぞ。そう思ってふと見ると、生々しい獲物の肉を目の前に横たえているではないか。この迫力シ−ンに出くわして、一瞬みんなは息をのむ。それをたらふく食ったのか、今は満腹といった表情で草むらの中で居眠りをこいでいる。残された獲物の状況から察すると、かなり食べてしまったらしく、残りの肉はわずかである。その獲物のタ−ゲットになったのは、あのおとなしそうなシマウマである。これが弱肉強食の世界とはいえ、なんとも哀れである。とはいえ、そういう人間どもも、牛やブタなどを食っているではないか! そんな声がどこからか聞こえてきそうだ。
 





あ〜、おいしかった。
満腹で眠くなってきたぞ・・・。








この珍しいシ−ンにとりつかれて眺め入っていると、後方から1台のポンコツ車が近づいてくる。そして、われわれの車の横に来て止まると、ドライバ−と何やら話し始める。その様子をうかがっていると、どうもこの公園を管理するレンジャ−のようだ。いったい、どうしたのだろう。すぐには話が終わらない。そのうちドライバ−が降りて行き、係官とさらに話し込んでいる。
 

やっと話が終わり、ドライバ−が戻ってくる。「どうしたのですか?」と尋ねると、公園取締官からペナルティを受けたという。つまり、道路からそれて、この草原の中まで入り込んだのがいけなかったらしい。というのは、今の時期は少雨のため草が乾燥しており、くるまが草原に入ると加熱したエンジンで火災を引き起こす危険があるというのだ。だが、1週間前までは草原に入っても問題なかったのに……とドライバ−は口をとがらす。ドライバ−の懐には少々痛いペナルティとなったようだ。みんなのために申し訳ない。
 

ゲートで昼食
ライオンは見るだけ見終わっていたので、サファリには何の問題もない。もう少し前に見つかっていたら、これらのライオンも見損なうところだ。くるまは元の道路へ戻ると、元気なく走り出す。しばらく走ると、大草原の中に浮かぶ島のような小山が見えてくる。そこを上りあがるとセレンゲティのナ−ビ・ヒル・ゲ−トに到着する。そこには事務所があり、林の中には石造りのテ−ブルや椅子が設けられて憩いの場所も提供されている。さあ、一行はここで昼食だ。
 





ナ−ビ・ヒル・ゲ−トの事務所
憩いの場所にはもってこい。







木陰のテ−ブルに分散して座りながら、まずは、冷えた白ワインをグラスに注いでみんなで乾杯! う〜ん、これはうまい。緑の林の中で環境は抜群、それに空気はうまいときている。まるでピクニック気分である。これは現地旅行社から差し入れられた白ワインをク−ラ−ボックスに入れて冷やしながら持参したものである。
 

ランチボックスを開けると、中には大きな玉子サンドイッチ、チキン、クレ−プに似たもの、ケ−キ、バナナ、リンゴなどが詰め合わせてある。バナナがおいしいことが分かっているので、まずバナナから真っ先にいただく。う〜ん、やはり期待を裏切らず間違いなくうまい。サンドイッチを半分残して、あとは全部いただく。ワイン付きのなかなか素敵なランチである。
 

人なつこい鳥たち
この憩いの場所には、人懐こい鳥たちが慕い寄ってくる。まず、長いくちばしに赤色のハゲた頭と大きな喉袋をぶら下げた背高のっぽの大型鳥がいる。アフリカハゲコウだ。これが2〜3羽いるのだが、いつも傍をのそりのそりとうろつき回っている。






アフリカハゲコウ
ノドからぶら下がった大きな袋に注目







それにもう1種類は、瑠璃色の光沢を持つ美しい羽とオレンジ色の腹を持つかわいい小鳥たちである。ルリムクドリである。みんなが食事をしていると、この鳥が足下に集まってきて、物欲しそうに餌をねだる。ここでパンクズを与えたいのだが、ちょっと待った。掲示板には「NO FEED(餌を与えないで)」と書いてある。悪いけど、許してね。
 





ルリムクドリ
瑠璃色の羽が美しい。
おっと、エサをやっちゃダメですよ。










(次ページへつづく)








          


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