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    no.19
(南アフリカ・ケニア・タンザニア・ジンバブエ・ザンビア・ボツワナ)



(南アフリカ編)






18.ステレンボッシュ・・・・ワインの町・テイスティング
 
14日目。いよいよ帰国する日である。午前中はこの旅最後の訪問地となるステレンボッシュの町を訪問する。今朝はゆっくりと7時に起床し、朝食をすませて出発準備を整える。とはいっても、持ち物は小バッグ1個だけなので、1〜2分もあれば十分である。窓外を眺めると、木立ちの間からは曇り空がのぞいている。雨は心配なさそうだ。これで、アフリカ旅行の期間中、傘を開く機会は一度もないことになる。ほんとに、ありがたいことである。
 

ステレンボッシュへ
8時半、バスはホテルを出発してケ−プタウンの東の郊外へ向かって走り出す。郊外の開けた道をしばらく走ると、そこから左へそれて進み、左右の視界にブドウ畑がちらほら見えてくると、やがてステレンボッシュに到着する。ケ−プタウンからくるまで40分のところに位置するこの町は、こぢんまりとして、落ち着いた雰囲気が流れる緑豊かなところである。
 

この町は、1679年に創設された町で、ケ−プタウンに次ぎ南アフリカで2番目に古く、ケ−プ地方に13ヶ所あるワイン生産地の有力な一つとなっている。ここのワイン生産地は1971に創設された南アで一番古い生産地であり、23の個人醸造家と5つの共同組合からなっている。
 

もともと、ケ−プタウンの西部地域は地中海性気候で土地も肥沃であり、古くからワイン造りのためのブドウ栽培が行われていた。この地域のワイン造りはケ−プ植民地の開拓者たちによって発展してきたが、その後フランスから逃れてきたユグノ−派新教徒によって向上したといわれる。この30年、南アフリカのワインはコンテストでも優勝するなど、世界的にも認められるようになり、日本への輸入も増えているという。
 

町中に入ると、バスは樫木類が生い茂る静かな並木道を幾つか曲がりながら、昔の時代様式の建物が点在する町並みをゆっくりと周遊する。人もくるまも少なく、ほんとにひっそりとした町のたたずまいである。
 





静かなステレンボッシュの街並み










とある1軒の店の前でバスはストップ。そこは外観は目立たない普通の感じのお店だが、中に入ると狭い店内には珍しいさまざまな品々がところ狭しとびっしり並んでいる。それは種々のワインに始まり、手製のジャムに干し魚があるかと思えば古着や骨董品まで並んでいる。これらが、天井まで届くほど雑然と置かれているのだが、この統一性を破壊したような雑多ぶりが、なんともおもしろい。この店は、こう見えても、なんと100年も続く店らしく、そういわれてみれば歴史がただよっている感じがする。
 

ワイナリ−へ
そこからバスは一軒のワイナリ−へと向かう。そこには広いグリ−ンの芝生が静かに広がり、その一角に工場らしき建物その他が並んでいる。また、ちょとしたレストランやみやげ品店までそろっている。ここでは、醸造所やワイン倉などの見学はできないが、女性のソムリエの指導で7種類のワインのテイスティングを楽しむことになる。
 





グリーンの芝生が広がるワイナリー









こぢんまりとした部屋には30脚ほどのテ−ブルが並べられ、その上にはすでにワインが注がれたグラスが7個ずつセットされている。ここに通されて席に座ると、ソムリエさんが登場し、正式なワインのテイスティング法の模範を示してくれる。それを見ながら、おどおどとテイスティングを始めてみる。
 





テイスティングの会場










その手順はこうだ。まず、ワインの入ったグラスの柄をにぎって持ち上げ、それを傾けたりしながら光に透かしてワインの色合いを確認する。次に、そのグラスをゆっくりと傾けて回しながら、グラスの内側にワインを塗り付けるように広げる。そして、それを鼻もとに近づけてクロスさせながら香りを嗅ぎ取る。最後に、ワイン一口を口に含み、それを両頬側に交互に移動させながら深く味わうのである。これがワインのテイスティング法なのである。少しは知っていたものの、正式なものはこれが初めての経験である。
 

テイスティング
こうしてソムリエからひととおりの説明を受けた後、いよいよテ−ブルの上に並べられた7種類のワイン(赤・白)のテイスティングが始まる。端から順にテイスティングしながら、それぞれの銘柄についてその特徴などの説明を受ける。またそれと同時に、そのボトルの値段が示され、お帰りの際にはどうぞというわけだ。こうして順にテイスティングしていくと、それぞれに味わいが異なっており、好みによって選ばれることがわかる。
 





この7種類のワインを試飲









どうしたことか、私の口には値段の安いものの方がうまく感じられ、高級なワインほどぱっとしないのである。これには参ってしまう。どこまで安あがりの人間にできあがっているのだろう。一通り終わると、お開きである。
 

最後の昼食
その後は、ここのレストランで早めの昼食となる。ワインの試飲で少しいい気分になりながら、テラスに設けられたテ−ブルでコ−スの昼食が始まる。これが旅行最後の食事かと思うと、なんだか名残惜しい気持ちでいっぱいになる。みんなも感慨深げに談笑している。
 

ダチョウの卵
食後の一服にワイナリ−の周囲を回っていると、小さな土産品店がある。中に入って物色していると、ダチョウの卵が目に留まる。中身を抜いて空にしたものだが、そのままの状態で売られているのは1個1000円以内と安い。だが、卵の殻の表面に彫刻を施したものは、その数倍の値段である。これはアフリカのよい記念になると思い、買うことにする。ランド通貨に両替したお金が少々残っているので、この最後の機会をとらえて使い切ることにしよう。
 

折角だから、彫刻の入ったものを買いたい。2頭のゾウが浮き彫りにされたもの(長さ15cm、直径12cm)を選び、店の婦人と値段交渉を始める。しかしそれも効を奏さず、結局定価の320ランド(約5700円)で買うことに。数少ないみやげだけに、これが割れたら大変だ。そこで、念入りに包装をしてもらう。(無事持ち帰り、今は床の間に置かれて、静かにアフリカの思い出を誘っている。)
 

帰国の旅
さあ、いよいよ帰国へ向けての出発である。これでアフリカ観光の旅は、すべて終わりだ。これからバスは空港へ向かい、ケ−プタウン発13時の飛行機に乗るばかりである。車窓から眺める郊外の景色も、なんとなく寂しげに見える。ワインの町、ステレンボッシュよさようなら。南アフリカの大地よ、いざさらばである。
 

定刻に離陸した機は、銀色に輝く機体を震わせながら厚い雲の彼方に消えていく。緑豊かなアフリカの大地よ、おまえは変化に富むさまざまな顔を見せてくれた。サバンナの大草原や湖の中で見せる野性動物たちの生の営み、アフリカ大陸を縦断的に切り裂く大地溝帯、地球をゆるがす巨大な滝、強風吹きすさぶアフリカ南端の希望峰……この地に生まれた人々は、こうした大自然と共存しながらアフリカのドラマを展開し、歴史を積み重ねている。これから先、人類発祥の地としてのアフリカは、どんな変貌をとげていくのだろうか。とにかく、アフリカの平和と安寧を心から祈らずにはいられない。           


19.あ と が き
 
15日間のアフリカ旅行の日程を無事に終了し、ほっとした気分である。ケニアは雨季に入ったところだったが、全期間を通して好天に恵まれ、傘を一度だに開く間もなく幸いした。アンボセリでのくるまのトラブルやナイロビ空港でのダブルブッキングなど、幾つかのアクシデントはあったものの、これらをなんとかクリアしながら、ほぼ予定のコ−スを回り切った。
 

マサイ族の人たちをはじめ、現地の人々との楽しい出会いもあった。アフリカの民族衣装や民族音楽にもふれられ、現地ならではの熱いエネルギ−を肌で感じることができた。オストリッチ(ダチョウ)、シマウマ、ワニなどの珍しい食肉を味わうこともできた。茶色に濁った水道水には閉口したが、澄み切った深い夜空に輝くサザンクロスに心を洗われる思いもした。また、思わぬナイトサファリの経験まででき、なかなか多彩な体験旅行を積み重ねることができた。
 

こうして、素敵体験のアフリカの旅も終わったわけだが、ここで旅に関する参考事項を以下にまとめてみよう。

1)アフリカ(東部地域)の旅のシ−ズン
3月末ごろから5月ごろまでが大雨期、10、11月前後が小雨期となっていて、その間が乾季となる。つまり、7〜8月と1〜2月が乾季である。その時季にはサバンナの草原も枯れ草状態になるので動物の動きが見やすく、また水飲み場に動物たちが集まるので効率的なサファリができると思われる。日差しは赤道直下のため強烈だが、湿度が少ないので日陰にいれば涼しい。
 

われわれが訪れた時期(3月末〜4月初め)は雨季に当たるが、ケニア地方だけが時折シャワ−に見舞われる程度で、それも局地的であり、持続性もなかった。ケニアから南部に下がるに従って雨の様子は見られなかった。

2)治安状況
ケニアのナイロビや南アのヨハネスブルグの治安の悪さは世界的にも有名で、白昼でも武装強盗団が出没して旅行者や市民を襲う事件が頻発しているらしい。ナイロビなどでは、白昼に警官隊と銃撃戦を戦わせているともいう。いずれにしても、旅行するに当たっては十分な警戒が必要だ。とにかく町中をぶらぶら出歩かないことが肝心だ。移動する場合でも、タクシ−を利用するなど、ドア・ツ−・ドアで移動することが望ましい。れわわれが観光した範囲では、何の問題もなく、その気配も感じられなかった。

3)服装など
朝晩が冷え込んだりするので、ジャケットを用意するのが望ましい。私の場合は、冬のジャケットを持参したが、早朝と夜に1〜2度着ただけであった。昼間は長袖のポロシャツ1枚でOK。この時季、半袖でもOKだが、日焼けを防ぐためには長袖シャツがベタ−である。
 

帽子は日差しが強いので必需品。サングラスはあったほうが望ましいが、帽子があればそれほど必要でもない。私の場合は、いつでも、どこでもサングラスなしで過ごす。それは自然の色が見えないからである。野球帽ぐらいのつばの長さがあれば、サングラスなしでもいける。
 

靴はサファリカ−の乗り降りがあるので、ズックのほうが身軽にできる。ビクトリアの滝見物ではツッカケサンダルよりも鼻緒付きのゴム草履がベタ−のようだ。歩く距離が長いからである。また水しぶきをかぶるので、合羽はもちろん、ショ−トパンツを持参するとよい。

4)望 遠 鏡
あるに越したとはないだろうが、特別に必要ということでもない。私は持参しなかったが、別に困る場面はなかった。荷物になるから考えものである。現地での貸与はしてなかった。

5)外 貨
米ドルを現金で持参した。アフリカはもちろん、南米、東ヨ−ロッパ、ロシアなど、すべて米ドルの現金である。やはり米ドルは世界の隅々まで通用しており、その信頼は現地通貨以上に高いようだ。ドルの力は偉大である。
 

ドルの金種だが、枚数が多くなるのが不便であるが、できるだけ小額紙幣を持参するのが望ましい。例えば50ドル、100ドルなどの高額紙幣になると、まずニセ札の疑いで警戒されやすい。それに釣銭をもらうのにも不便である。高額の支払いはできるだけカ−ドにまかせ、ドル現金は1ドル紙幣を中心に5ドル、10ドル紙幣ぐらいでまとめるのが望ましい。それ以上の高額紙幣は不要である。特別の買い物をするなら別の話だろうが……。現地では1ドル〜2、3ドルの支払いが多く、みやげ品も小物であれば10ドル以内で十分だ。チップも1ドル単位だし、1ドル紙幣の出番は非常に多い。
 

私の場合、ドル通用圏の国へ行く場合、1ドル紙幣は50枚程度、他は5ドルと10ドル紙幣を持参し、20ドル紙幣以上の通貨は持参しないことにしている。ただし、紙幣の枚数が多く厚くなるので、分散して持つ必要がある。
 

今度の旅で回った6ヶ国のうち、ドルを現地通貨に両替したのは南アフリカだけである。それも20ドル分のみだが、それでも残ってダチョウの卵を買う羽目になった。どの国でも、ドル通貨がそのまま通用するので、両替の必要はない。

6)その他の持参物
*トイレットペ−パ−
 われわれが宿泊したレベルのホテルやロッジであればトイレットペ−パ−
 の持参は必要ない。日本国内と同じ紙質と思えばよい。ロシアなどの比
 ではない。
*ペンライト
 ペンライトの持参が望ましい。ロッジなどでは、節電のため夜11時ぐらい
 から停電になる場合があるからだ。
*マスク
 サファリカ−で地道を走行すると、すごい砂ぼこりをかぶることになる。暑
 いから窓は完全に閉め切ら れないし、そうなるとほこりが車内に舞い込
 んでくる。それが長時間続くので、ほこりをかなり吸い込 むことになる。
 気管が弱い人には健康に悪い。こんな状況に備えて、マスクを持参し、
 防御することをお勧めする。私も持参して使用したが、そのマスクが茶色
 に染まるほどのほこりである。途中から暑さで息苦しくなり、結局使用を
 断念してしまったが……。

7)飲 物
ミネラル水などは現地ホテルで入手できる。食事時に買ったミネラル水の残りを利用すれば、他でわざわざ買う必要もない。
 

ビ−ル(小ビン)1本の値段は、2〜3米ドルの範囲。ミネラル水1本2ドル、各種ジュ−ス類も2〜3ドルといったところである。

 
アフリカ・サファリの旅はくるまに揺られる旅でもある。クッションの悪いジ−プやサファリカ−で地道やあなぽこの空いた舗装道路を高速で飛ばすからである。それも長期の15日間ともなれば、かなりの体力を消耗することになる。したがって、旅行に当たっては十分な体力づくりを心がけ、乗物に弱い人は乗物酔いの薬を用意すべきだろう。万全の体調を整えながら、ダイナミックなアフリカの旅を楽しんでもらいたものである。
                                         (完)  
                             (2001年6月18日脱稿)


(長文の旅行記にお付き合いいただき、ありがとうございました。また、感想などございましたら、メールでお送りいただければ幸甚に存じます。) 筆者











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